昨秋から本格始動した小学部の英語コース「どんぐりっしゅ!」
和英英和辞典を必携です
数年前まで、「小学生に英語の文字は教えない、見せない」を徹底してきました
英語こそ、幼少期からのお教室通いが当たり前のような感覚があるかもしれませんが、
私は、長年子どもたちの小学校→中学校への繋がりを見てきて、
早期英語教育を受けた子たちがそのまま中学校英語でも英語を得意科目にし続けた例があまり多くないことを知っています(もちろん、うまくいった例もあることはあります)
英語を日常言語のように習得できる環境にある場合はまた別ですが
だから、私は英語を学ぶ前に日本語をしっかり習得すべきでは、とどこか思ってきました
英語が日常でない、中学生になってももちろんまだまだ日常でない、生きた英語を聞く機会も、使う機会もほとんどない日本の子どもたちにとって、それでも、必修科目である英語との付き合いは切っても切れないものです
そんな中、10年以上前に糸山先生の開発した「日本人が日本にいながら英語を習得するための学習法 DONGLISH」に出会いました
以来、どんぐり学舎中学部D→K RoomではDONGLISHの素晴らしさを中学生に伝授し続けてきたのです
これは、学校の英語の授業で教わることとの板挟みの歴史でした
板挟みに遭うのは生徒たち自身と、私もでした
たとえば一般動詞の文、
You like animals.
を否定文にせよ、と言われたら、
You don’t like animals.
と書き換えます
疑問文にせよ、と言われたら、
Do you like animals?
と書き換えます
学校では
「否定文にするときは動詞の前にdon’tを入れましょう」
「疑問文にするときは文頭にDoをつけましょう」
と教わりますし、
どの参考書にも同様にそう書いてあります
でも、
DONGLISHではそんなことは教えません
だって、そもそも、上記のような教え方、その内容は違っているからです
主語がYouじゃなくてHeだったら?
肯定文のlikeはlikesになり、do はdoesになり…
「否定文にするときは動詞の前にdoesn’tを入れて、動詞は三単現のSをとって原形に戻しましょう」と教わります
これも、DONGLISHの文法解説とは違っているのです
こうやって、数式のように子どもたちに英語の文法の仕組みを暗記させ、
こういうときはこう、ここをこれに変えてこう、というような教え方をするのは、
大勢に一斉に教えるためには仕方なかったのかもしれません
でも、それで大勢の子どもたちが納得しながら学び進めてきたかというと、
実際はそんな結果にはなっていない気がします
「なんでdoが急に出てくるの?」
「doesのときはなんで原形にするの?」
ある時、学校の先生にそのことを質問に行った生徒が、
「とにかく覚えなさい」と一蹴された、と私に愚痴ってきたことがありました
先生は、そう教えるよう訓練されているのでしょうし、確かに「とにかく覚える」方が手っ取り早いっちゃ早いので、先生のお気持ちはわからないでもありません
でも、子どもたちの「なんで?」は、思いのほか、学習に弊害を来すのです
子どもは、納得すると自分で動き出し、学び出すからです
それは大きな話では、「なぜ学ぶのか」「なぜ勉強するのか」みたいなところでも同じなのですが、それはまた別の機会に
さて、夕べ、DKR1年生のクラスで私は生徒たちにこんな話をしました
「お魚を数えるとき、1ぴき、2ひき、3びき…っていうよね。じゃ、4だったら?」
「4ひき。」
「そうだよね、じゃ、どうして?どうして1のときはぴきなのに、4のときはひきで…それはなんで?」
「………」
まあ、毎年話しているので、このブログにも同じことを書いたことがあるかもしれませんが、私はこうして、生徒たちが「日本語の達人である」ことを自覚させていきます
そして、どのようにして達人になったのかも考えさせるのです
実際には、濁音や半濁音に変化するのは音便なので、私は説明できるのですが、生徒たちには時間が必要です
もしかしたら時間をかけて考えたら法則を見つけ、説明できるかもしれません
でも、とにかく、私たちはそんな理由など知らない頃から、「匹」を自然に言い換えて使っていました
たぶん、かなり小さい頃から
それは、周囲の人がそう言っていたから
何度も聞いたことがあるから
絵本に出てきて、何度も繰り返し読んでもらったから
覚えたての頃は、「1びき」とか「3ぴき」とか可愛い言い間違いをして直されたりしたこともあったかもしれません
でも、普通、小学校低学年でも、いつのまにか言えてしまっているはずです
それで、また、生徒たちにこんな英文を書きました
You have a nice bag.
You have nice a bag.
どっちが正しい?
中学1年生も終盤にさしかかっている生徒たちは、全員が上の英文が正しい、と答えました
そうだよね、aはどこにつくか、ってもう、なんとなくわかるよね
じゃあ、なんで?
niceは形容詞で、bagを修飾しているから、aは「nice bag」につく冠詞です、なんて説明できる子はいませんでした
それでも、みんな正しい英文を選べるのです
なぜ?
それは、もう、なんとなく、見慣れていて、聞き慣れているから
実際に発音してみると、違和感があり、「なんとなくこっちが正しい」とわかるから
それはなぜなぜ?
…それは、
何度もこういう英文を見ているから
何度も書いているから
そうでしょう
全ての単語の並び方について、文法的に説明できることはもちろん大切なこと
ただ暗記せよ、じゃなく、糸山先生が14世紀くらいからの英語の歴史をひもとき、DONGLISHという学習法を完成させてくれたのは、子どもたちが「意味もわからず覚える」ことのないようにするため
子どもたちが疑問に思いながら学び進めることがないように
だから、私たちはDONGLISHで英語を学んでいく
学校では、全員に一斉に教えるために簡略化した方法で教える内容もあり、辞書を引いても、英語の文法の理由は省かれていて、とにかく、簡単に訳すための訳例が載っているだけ
だから、本来はこういう意味だった、こういう語源だった、ということをDONGLISHで学びながら、学校の英語では、英語そのものに慣れていく練習をするということ
教科書に載っている英語を何度も書いて、DONGLISHで訳していく、ということは、正しい英語の文法を見慣れる、書き慣れる、ということ
こういうときはこう、という法則を、きりもなく出てくるルールを、「ただ暗記する」ことが苦痛じゃないならどんどん暗記すればいい
それはそれで役に立つと思う
でも、まずは中学生の間は、教科書でDONGLISHをマスターしてみて
教科書の英語は古い、ネイティブは使わない、とかいう意見もあるけど、でも、間違った英語は書いてないの
堅苦しいかもしれない、古くさいかもしれないけど、正しい英語で書いてある
私たちが「1ぴき、2ひき…」を見慣れて、聞き慣れて、いつの間にか当たり前に言えるようになっていたのと同じように、正しい英語を見慣れる、という意味でもこの勉強法をマスターしてほしい
と、そんな話をしたのです
数年前、小さい頃から英語を習っていて、中学から私の教室に来た生徒が、上記した一般動詞の疑問文と否定文の作り方を私がさらっと説明したら、悲鳴のような歓声を上げて「そういうことだったんですねーーー!!」と喜んでいました
それからは、新しい文法が出てくる度に納得のいく理由をしっかりと刻み込んで、それから文法練習をし、英文を訳すようになりました
「勉強法がまるで変わった…」と驚いていました
自分が納得する、ということが子どもにとってもとても大切なんだ、と見せてもらえた例です
そんなわけで、現在の中学生や高校生や大学生は中1からのDONGLISHだけで小学校までは学校の英語も今みたいじゃなくて、遊びみたいなものだったので先取りはしていないし、相変わらずのD→K Roomの授業ですから特にここで特訓させているわけではないのですが、英語は得意科目になっている子が多いです
高校生や大学生になっている子の中には「日本語を読むのと同じスピードで読める」と言っている子も何人もいます
その理由も、DONGLISHのメカニズムを知れば、当然のこととわかります
ただ、やっぱり断言できるのは、「日本語力が豊かであることが英語を学ぶ上では鍵である」ということです
そもそも、言語に興味がない、文字を読むことも書くことも好きではない、という子どもには、国語も英語も科目となると難しく感じることが多いと思います
そこは目下の課題です
なにせ、目の前で何時間かけて教えて、楽しそうに納得してくれても、翌週にはゼロか、マイナスの状態に戻っている、という生徒に何人も出会っているので、これは、対策の必要な特殊な例だとは思いますが、軽視できないある種の子どもたちなんじゃないかな、って思うのです
これについても、また別の話になります…
そして、昨秋から小学部英語コースを設けた理由は、小学校英語で、中学校英語と同じように、「とにかく覚える」という授業を始めてしまっているからです
文法的な理由も、単語の詳しい説明もなく、ただただ、覚えさせ、さらに、中学生になると、「小学校で習ったことです」とかなり軽く扱われ、素通りされる内容も増えてしまっているのです
小学英語の学校の授業が有効だと確信して、中1の最初のレッスンから、be動詞と一般動詞と助動詞canが一斉に新出英文法で出てくるのでしょうか
それでも皆混乱しない、と踏んでいたのでしょうか
実際はどうでしょう
みんな大混乱です
でも、暗記さえすればテストの点数が取れるので、結局暗記に走る
それはほとんどの子どもにとって、とても苦しく、安定感のない勉強法なのですが、DONGLISHを信じ、一生懸命習得しようと努力してくれた子は、どんどん楽になっているのが事実です
小学部英語コースは、そんな「中1ギャップ」を取り除くために作った、ということもありますが、子どもたちが英文法を中学生になって学び始める時に、当たり前にその理由を考え、納得して学び進めることができるように、その基盤を作っているのです
そう、それは、どんぐり問題と同じで、自分で考える経験をたくさんさせたいからです
(これは「通訳は君だ!」というオリジナル教材。日本語がたどたどしい人について、みんなに通訳さんになってもらって、その人が何を伝えたいのか、考えて訳してもらっているのです。例:《たどたどしい日本語》私は/好む/リンゴを//→《通訳》オレはリンゴが好きなんだぜ。という風に、キャラクターによって自在に訳し分ける子どもたち、名通訳です。)
さて最後に、現在2年生の通信生に頼んで書いてもらった手記を掲載したいと思います
今やもう、DONGLISHの先生になれるんじゃないか、ってほどにDONGLISHを習得し、どんな英文でも訳してしまう生徒です
「最初からこんなんだった?」なんて話から、「最初は必死でしたよ~」みたいな思い出話、そして、「じゃあ、どうやってここまで来たんだろう?」ってことで、思い出して書いてもらったのです
訳しただけで終えずに、「DONGLISH訳→英文」「方言訳→英文」という「原文復元法」、そして「音声→英文」というDictation(糸山先生が最終形態、とおっしゃっている仕上げ方法)まで自主的に取り組んでいます
ここまでしているのだから、先生になれるほど上達するわけです
通信生は実教室に来ることもなく、たったひとりで自宅で勉強を進めている子たちです
実教室の生徒たちには、彼らの話を時々します
どんぐり通信生と同じで、仲間とふれ合う機会も少ない中、それぞれの環境でみんな頑張ってるんだよ、とこの手記も夕べ、紹介しました
私にせかされるでもなく、期限を決めているわけでもないのに、定期的にメールで添削や相談を送ってくる通信生たちの話を
はっ、と気づいて思い出したように、DONGLISH専用ノートをカバンから出して、作業を始める生徒たちなのでした
日々の課題に追われているんだよね
余裕のなさが見えます
でも、みんな平等に時間を使ってる
きっと、まだまだやれるはず
できれば本当に大切なことに時間を使ってほしい
ただ覚えさせられる、ただ意味もわからず反復させられるようなことから、逃してあげたいな
とにかく産まれてから小学校高学年にさしかかるまでの10年間くらいが、
日本語力強化月間です
教え込むのではなく、そばで使っていればいいのです
物語を読み、会話をし、メモを書き、手紙を書き、思いを伝え合い、
言葉が気持ちを表してくれる、ということを体験させていくだけです
英語を先取りしても、先に取るだけで後からみんなに追いつかれます
先取りするなら先取りし続けなければ差は縮まってしまうことを、多くの人は気づきません
先に計算問題を教えれば、周囲の子ができないうちにその子だけできるけど、
周囲の子のほとんどがある時期になればできることなので、その時は、さらに先を行っていないとその差による優越感は味わい続けられません
そんなことに意味があるのでしょうか
それより、子どもは自分が納得して理解すると自分から学び始めます
子どもが自ら学び始めると、大人の指導など追いつかないんです
ずっと先取りさせ続けることよりずっと、健全で、なんなら課金も少なくて済む、有意義な方法だと私は思います