どんぐり倶楽部良質の算数文章問題
2MX49-3
1mのリボンを3mm切ると残りの長さは何cm何mmですか。
いつも簡単そうな問題ばかりを選ぶその子
この日もじーっと問題文を読んで選ぼうとしている
「読んで選ばないんだよ~」天井に向かって私が言う
「おみくじみたいに手を突っ込んで選ぶのがいいかもね~」とまたひとりごと
その子が顔を上に向けて、問題ケースに手を入れてごそごそしているのを感じる
うふふ、おみくじみたいにしているのかな…
でも、2つに折られた2MX49が気になった様子で、
「これも絵を書いてやるの?」とトコトコ聞きに来た
「そうよ~上の計算は、大きく筆算して、下の3つは絵を描いてね~」
「うん、わかった…」と自分の席に帰る
しばらくして悶絶している気配がする
「…うーん なんだっけ、忘れちゃったよ~!!!」
「うるさいっ」
隣で集中している「姉」に注意される、その子(笑)
で、またひとりごと
「忘れちゃったのなら聞きにきてもいいのかもよ~」
すると、またトコトコその子がやってきた
「これって、どういうんだっけ」
手には定規を持っている
どうやら「1m」「3mm」あたりで混乱している様子
なんなら読み方もあやふや?
私はカタカナでmの上に「メートル」mmの上に「ミリメートル」と書きながら、
「竹のさ、長い定規あるじゃない、あ、古いか、
学校の先生が黒板で使う大きな定規あるじゃない」
ウンウン
「あれが1メートルでさ、そうね、○○くんのこの辺までかな、身長いくつ?」
なんて雑談しながら、笑わせながら、長さの単位を体感させていく
「1メートル50センチはある?」
「150もないと思う!」集中して問題を解いている「姉」がノールックですかさず突っ込む
「そうか、ないってさ。1メートル50センチ。
150センチね、じゃあ…140センチくらいかなあ、1.4メートル…」
わざと単位換算しながら言ってみる
ウーン
「まあ、この辺かな、1メートルっていうとね」
彼の肩の辺りを地面から指さして、それからクロッキー帳の隅に、
「1m」の図を描く
「それでだ、その定規のこの目盛りが1センチメートルだね」
ふんふん
「これがね、100個かさなると、1メートルになるわけ。」
「え、じゃあ、1メートルは100センチか」
(どうやら思い出してきたみたい)
「そうそう。でね、このちーっちゃい目盛りがね、1ミリメートルなの」
私は、最初に描いた1mの絵図に、分解して1cm、
さらに分解して1mmの説明を描き加えた
ふんふん
しばらく黙ってみる
「なあんだ!!そんなことか!!」
急に自分の机に戻り、何か描きだした
「絵じゃなきゃダメなの?」ノールックで聞いてくる
「絵っていうか、図っていうか、ねえ」
答えると、「むーーむむ…」と悶絶の声が小さく聞こえてきた
それでもそのまましばらく待っていた
「なんだよ、こんな簡単なことだったのかっ」
じこじこ、何か一生懸命描いている
それで、
しばらくして、
彼がクロッキー帳を持ってきた
「99㎝7mm」
正解、お見事です
「これを、こうやってとっちゃえばいいんだよ」
彼の描いた図(写真を撮らなかったので、私の手による復元図)が上の図
(あ、こんなに数字情報なかったかも…)
これは、高学年の子が時々解いても、
ただ、1mから3mm切り取るだけなのに、
97㎝って書く子や、90㎝7mmって書く子や、
意外とすんなり答えが出ない問題のひとつで、
それはそれは細かに目盛りを描いて丁寧に数える子もいたりするのですが、
彼の言葉「こうやってとっちゃえばいいんだ」というのは、
「視覚イメージの操作」をしたということなんだと思うのです
彼の頭の中で、この図がどう動かされたのか、全部はわからないけど、
いつももっと単純な問題で悶絶する彼が、
「なんだよ、こんな簡単な…」とつぶやいた後、
「1mから3㎜をとっちゃった」という操作
とても興味深く、
そして、「お見事です」と言われた時の彼の表情が
とても立派だったので記録しておきたくなりました
些細な、本当に些細な心の動きがあとあと響いてくるように、
些細な、本当に些細な思考の動きは、
これからもずっと、彼らの頭の中で、回路を作り続けるのです