日曜日の朝、なにげなくテレビをつけると、
こんな番組をやっていた

よくあるお母さんの悩み相談か…と思って寝起きでぼーっと見ていたけれど、
ある親子を密着した映像を見ていて泣きそうになった

最初は、スタッフとカメラがあることを意識していたらしきお母さんも、段々と素になっていく感じがした
3歳くらいの上の子は、自由奔放で、その遊びにつき合いながら一生懸命家事をしているのに、さらに赤ちゃんもいる
食事をさせるのも一苦労

上の子が「パルメザンチーズ」の円筒容器を見つけてしゃかしゃかやりだす
蓋を開けてまた振る
粉チーズが飛び出す
子ども、笑ってますます振る
そこでお母さん、気づく
怒るとも泣くとも言えない嘆きの声
なんだか自分にも記憶がある
「あーあ!!」って容器を取り上げる
子どもの靴下や服にも粉チーズ
「ちょちょちょちょちょ!!!!!」
って、掃除が済んだ床を呆れてまた掃除

目を離すとまたその子はチーズの容器を持っている
またしゃかしゃか…
今度は床に落ちた粉チーズを嬉しそうに?舐めている?舐めようとしている?
いよいよお母さん、嘆きながら「バカじゃないの!?」みたいなことを言った!?
そう聞こえた

晩ご飯、
「夫の帰りは9時過ぎ」だそうで、3歳と、赤ちゃんと、お母さんで食事
もう、疲れきっているお母さん
こんなの特別な1日じゃない
これが毎日

場面は変わって、夫が帰宅
携帯電話の店舗に勤めているとか
夫も疲れきっている
表情は固いまま

子どもは寝ているのだろう
触れ合うことも、もちろんない

「今日はね、パルメザンチーズの容器をね…」
お母さんは、お父さんに報告する

なんだろう、この手の子どものいたずらって、
その瞬間に感じるものと、あとで思い出すものとで、
もう、それはもう大きな違いがある

あとで考えると「どうでもいいか」とか「たいしたことないか」と
自分でも笑えるのに、そのとき必死だった気持ちや、困った気持ちはせめて夫くらいには伝えたいのだ

それでも夫は「ふーーん…」
無反応………

「ひえーー!!大変だったなあ!」のひとこと!!ぷりーーーず!!!
それだけで
「まあ、拭けばいいんだから、たいしたことないんだけどさ、参ったよ」と
お母さんも笑ってまた頑張れるんだけどな

お父さんはお父さんで、
朝から晩まで携帯電話のお店のお客さんがとぎれず、大変だったんだろうな
疲れちゃうよね
機械の故障だとか、操作方法だとか、そんなの、毎日山のように押し寄せるし、クレーム対応だってたくさんあるんだろうな
だから、家に帰ってくることには精根尽き果てて、あとはもう、ご飯食べてお風呂はいってぐうたらして寝るだけがいいよね

くだらない子どものいたずらや、ご近所の話、ママ友との話なんか、聞きたくもないよね…

なんだか泣きそうになってテレビを消した

あったなあ、長女が赤ちゃんの頃、おもちゃのピアノの真っ白い鍵盤に、
ボールペンで落書きをしてしまって、
なんだかその頃他のことでも色々あって、確かに私には余裕なんかなくて、
きいいーーーーーっ!!!!っていっぱい怒っちゃった
あとで考えるとたいしたことじゃないし、怒ってしまって長女がかわいそう、って自分も泣きながら反省したんだけれど、それでもその時は、そんな「些細ないたずら」にもう、自分の我慢の緒が切れてしまったんだ

それで、帰宅した夫に半べそで報告すると、「子どもだからねえ、怒ったらかわいそうだ」的なことを言われ、ますます、ますます、私は地獄に突き落とされたような気分になってしまった

「大変だったね」の一言もなく、同情、共感の表情さえない
そう、そう、わたしが「お父さん」で、1日外で働いて帰宅して、おかえり、ただいま、に食い気味で子どもの些細ないたずらについて愚痴られても、「ああ、そう」としか言えないかもしれない

でも、
そうじゃないんだよなあ…

そんな若かりし日のことを思い出しながら、日曜日の朝、ゆっくり家事をしていると、夫が起きてきたので、早速さっき見た番組のことを話してみた

「毎晩9時以降帰宅?どうせ朝はゆっくりなんだろ」

きいいいいいっ!!そういうことじゃなくっ!!!

「黄昏れタイムは大変なんだよっ!」と言うと、
いつの間にか起きてきた次女が「たそがれタイムってなに?」


あのね、人間はお日さまとともに生きているの
段々明るくなって夜が明ける朝と違って、
段々暗くなって夜を迎える夕方は、なんとなく寂しく、不安になるものなの
電気がついて、にぎやかで、現代の夜は夜じゃないみたいに明るいこともあるから、大人になると忘れちゃうけど、小さい子ほど敏感で、わけもなく夕方は不安になってぐずるわけ
だから夕方に幼児番組が始まった、って聞いたことあるよ
夕ご飯の支度をしなくちゃならないお母さんと、黄昏タイムの子どものためにね

お母さんはどうしてたの?

お母さんは、ひたすらおんぶ
まあ、5時半には晩ご飯食べさせはじめて7:00には入眠、7:30には熟睡、というリズムでやってたから黄昏れさせる暇を与えなかった(笑)
お母さんそのあと授業だったしね

どうやら黄昏タイムを思い出してきたらしい夫もふ~んと聞いているやらいないやら

「悪いのは社会だよね!!」とまだまだ興奮冷めやらぬ私の演説は続く(日曜の朝からうるさい)

あのお父さんの会社のエライ人はさあ、
その人が働いている陰で、家でお母さんが必死で子どもをひとりで面倒みていて、休む間もなくて、疲れきっていることを知ってもなんとも思わないのかなあ!?
それって個人の責任であり、会社は関係ないのかなあ!?

どこからどう直していけばいいのか、
自分でも話していてわからなくなってきた
結局家に子どもと残された親は、孤独に努力するしかないのか?

そう、私は外に出た
天気がよければかならず家から出ていたなあ
それはそれは孤独だったけど、
家の中に子どもとずっといるよりは、外の方がよかった

同じく子どもを連れた人がいたり、
お年寄りがいたり、野良猫がいたり、
木の実や葉っぱが落ちてたり
子どもがそういうものに引き寄せられるたびに、時間はゆっくりと、しっかりと過ぎていく
なにをしようと思わなくても、子どもがふんわりと、遊びを見つけては過ごしている
その近くで見ている
それだけで、あっという間に午前中は終わる

朝、夫のお弁当と自分たちのおにぎりを作って、夕ご飯の下ごしらえまでして夫の出勤直後には家を飛び出す
掃除洗濯もできるだけ簡単に、さっさと終わらせておく

午前11:00くらいまでうろうろと歩き回ったら、おにぎりを食べさせる
残念ながら、近所に安心して散歩できる場所はなかったから、
毎日車で飛び出していた
できるだけ、遊具のない公園へ
遠征すれば小高い丘や、小さな湖、森もあった
屋外でおにぎりを食べる時、気にならないのは子どもがこぼすこと
少しくらいこぼれても「小鳥さんが食べにくるかねえ」って笑って言える
食べ終わると車に乗せて家に向かう
車の中で午睡
家に着いてからでも、必ず午睡はした
それでも、2:30か遅くても3:00前には自然に起きるよう明るくしたりして
(午睡のときは暗く静かにしてきちんと寝かしつけた)起こした
起きたら午後の始まり

3:00にはおやつ
これも、作っておにぎりか、蒸かした芋とか、小さい頃はお菓子を作ったりはしなかった
甘いものはあとでいいかな、って
すると、5:30晩ご飯までのカウントダウンが始まる
洗濯物を畳んだり、お風呂掃除をしたり、庭の手入れをしたり、
歌を歌いながら子どもと全部遊びにして済ませる
適当でいいや、って感じだけど

5:30晩ご飯
夫はもちろん、まだ帰ってこない
6:30入浴
次女が生まれてからは、お風呂の蓋に次女を寝かせて、3人で入ったりした
新生児のころは、脱衣所に寝かせておいて、猛スピードで自分が洗って、長女を洗って、次女を入れた
実家は隣町にあるけど、仕事があるから里帰りはしなかった
退院翌日から授業をしていたし
7:00から入眠儀式
絵本の読み聞かせ
夫は早い日はこのくらいに帰ってきていた
7:30には完全に眠る
この頃、私は8:00から10:00まで中学生の勉強を見ていた
「子どもと一緒に寝ちゃうよね~」というママ友の話を、
うっとりと聞いていた

とにかく何でも話し合うから、当時も、今も、夫には「子どもとの時間」について考えてもらってきた
かなり努力してくれていたと思う
今は若いお父さん達を部下に持つ年代になってきて、「なるべく早く帰れ」とか言うみたい
奥さんと子どものために、なるべく休みをとれ、とかね

それでも近所の若いお母さんの話なんかでは、「毎日午前様なんです」なんて家庭も…
なんだろう、その仕事…子どもどころか、本人が参ってしまうんじゃないか

家庭ってなんだろう
結婚ってなんだろう
子育てってなんだろう

お父さんとお母さんだけが考える問題ではない
お父さんのまわりのひとたち、お母さんのまわりのひとたちみんなで考えなくちゃならない

そして、
お父さん、お母さん自身も、
親となった責任を、きちんと負って生きなくちゃならない
子どもを不幸にはできない

上記の番組内で、お母さん達は、安心して話せる保育士さんのいる施設に駆け込んで、愚痴を聞いてもらったり、涙を流して相談したりしていた

気持ちが落ち着き、子どもと接する時に余裕もできて、きっとプラスになっていると思う
ベテラン保育士さんも、優しく、「私もそうだったわ」って共感して肩をなでてくれていた

共感して、慰めることまでは、できる
問題はその先だ

家に帰れば、また、疲れきった夫と、パルメザンチーズをまき散らす子どもとの生活
また、「バカなんじゃないのっ」って叫んで、夫に「代わってもらいたい!!」と投げつけて、
たまりに溜まったところでまた、愚痴を言いにあの場所へ?

きっと、それだけじゃない解決法があるはず

でも、ひとりじゃない、って思えることがないと、
強くなれない

強くなりたい、って思う人にしか、強くなれるチャンスはないんだけどね…
あきらめないでほしい…

孤独な自分の育児時代を思い出して、
ずーーーっと高い空を見ていた日曜日の朝でした