※0MXを5年生で解いた生徒の作品
 年齢的にも、思考力的にも余裕があるのでこんな風に遊び心満載で解きます
 この問題を解くのに苦戦する高学年も実際にはいます
 

9月から、どんぐり学舎に新しいメンバーが数名加わりました
新しいメンバーが加わっても、なぁんにも変わらない、安定したのんびりの雰囲気のどんぐり学舎です

はじめにゲーム
「今日はなにするん?」と聞いてくる子もいれば、「今日はこれしよう!」とくらから自分たちで持ってくる子もいます
私が「今日はこれがやりたいんだけど!」と提案することもあります
「いいね、やろうやろう」

とりあえずビール!
みたいに、
とりあえずゲーム!
で、わいわいと始まりますが、さ、じゃ、そろそろどんぐりタイムしようか、と言うと、誰も文句も言わず自分のクロッキー帳を開き、自分の問題ケースを取りに行き、それぞれのペースでどんぐり問題を始めます

もう何年も取り組んでいる子はそれぞれがそれぞれのペースで取りかかりますが、新入会の子たちには特徴があります

それは、「せかせかしていること」
もちろん、個人差があって、最初からゆったりと楽しげに取り組む子もいます
でも、多くは、(今、慣れてきた子たちも含めて最初は)せかせかタイプです

問題を仮止めして、さささっと絵を描いて、さささっと計算を書いて、「できたっ!!」って急いで持ってきます
「あれあれ、随分お早いこと」とか言いながら、私はわざとゆっくり作品を見ます
「ふむふむ、赤い花と白い花が…」と問題をゆっくり読みながら、途中で止めて、そこまでの絵図をたどります
「ここまで、いいね」
と、私がゆっくり読んで絵図をたどることで、「そうか、ゆっくり途中まで読んで、絵を描いていけばいいんだ」ということを再確認させています
途中でこんがらがってしまっている絵図の時は、「ここまで、いいね」で、問題文の「ここまで」を指して、「このあと、だな」とゆっくり返却します
場合によっては、その後の絵図がどうこんがらがっているのか、解読し、指摘することもありますが、具体的に指摘するよりは、「ここまで、いいね」を強調します
そうすると、「ちょっと待って、その後をもう一度描いてみたい」という子には再チャレンジの機会をあげます
そうでない場合は、「別の問題でやってみよう」とお宝行きにします
せかせかタイプの子は、絵図も忙しい感じで雑で簡素です
楽しんで描いているというより、問題を解かなくては、と急かされている感じです
私は一切急かしていないし、1問だけじっくり取り組んでおしまいにしたって何にも言わないのに、なぜか、急いで解こうとするんです

どんぐり問題には「公園で…」とか「今日は○○大会です」とか「長い長い旅に出ました」とか、問題を解くためにはあまり関係ないような描写が出てきます
取り組み方の約束では、「問題文の全てを絵にする」とありますから、「公園で…」とあったら公園の絵から描き始めることになっています
それを説明しても、「公園」と字で描く子や、問題と直接関係ないことはさっさと読み飛ばして肝心な部分から描き始める子もいます

これは、長年どんぐり指導者として子どもたちの絵図を見てきて確信しているのですが、その「余計な絵」を描く子ほど、進化しています
それも、細かいことを言うと、同じ「公園で…」の文でも、毎回違った絵図を楽しんで描いているようなタイプが、長年見続けていると、かなりの思考力を身につけていくタイプに多いです

以前、林修先生が「読書をする子が勉強ができるのではない。勉強ができる子が読書好きなのだ。」とおっしゃっていましたが、それに似たような…それらの余計な絵図を描く子が思考力を高めていくのか、思考力が高いから余計な絵図まで楽しんで描くのか、どっちなんだろう?と思えるケースもあります

でも、だからといって「ちゃんと公園の絵も描きなさい!!」て注意して、無理矢理描かせても意味がないことはもちろんおわかりいただけるかと思います
どんぐり指導者(保護者の方ももちろん含む)が着目すべきは、「全て絵にする、ってルールは説明してあるのに、なぜ描かないんだろう」という部分です

せかせかタイプに戻ります
「生まれつきせっかちなので」とわが子を分析して説明してくださる親御さんもいます
(内心「なんじゃそりゃ!」って思いつつ…(笑))
でも、「考える」時はせっかちもなにもないんです
じっくり考えることや、何かを鑑賞して味わうことなど、せっかちな性格の人でも自動的にモードを切り替えるのです
むしろ、考える力を養おうって時に、そのモード切替ができないことは、その後の学習状態に支障を来すことは間違いありません
なぜ、モード切替ができないのか

学校がせかせかさせちゃうから
と、学校生活だけのせいだと思いこんでいる親御さんも多いかもしれません
チャイムで行動して、なんなら5分前行動とか…それでいて、失敗も許されないから常に緊張している子どもたちの学校生活
帰宅直後の子どもの背中を触るとがちがちに固まっている、と知人の整体師がよく話していました
でも、限度はあるけれど、集団生活の中で時間配分の決まりや、ある程度の規律は必要です
だから、緩急をつける必要がある
そこで、肝心なのは家庭生活なんです

朝、起きてこない
ギリギリで起きてきて、登校時刻は迫ってる
夕方、習い事があるのにのんびり帰宅してくる
早くしなさい!って言いたくないのに言わなくちゃ…
お風呂の用意ができているのに、なかなか入らない…
さっさと片付けたいのにいつまでも食事も終わらない…
早くして!!ついに声を大きくしてしまう…

いやーー
どんぐり学舎でさえも、もし、「早くして!」って言われながら連れてこられているのかもしれない、と思うと心が苦しくなるのです
やっぱり小学生に時間の決まった習い事は不要だよ~って思うジレンマ…
だからせめて、子どもが自分から「早く行こう!」って行動する以外は、急かさないでね…
まあ、早く来ないと「とりあえずゲーム!」タイムが終わっちゃうからそれも嫌かな???
いずれにせよ、「緩急つける」ために習い事の時間設定があるのも週に1日が限度かな、と思います
毎日なんてもってのほかですが、1日おきでも、子どもたちは常にせかせかしちゃうことでしょう
最近では、親御さんの仕事の関係か、週末に習い事のスケジュールが入っている家庭が多いように見えますが、せっかく学校がお休みの、まるっとのんびりモードでいられる週末に…やはり、時間設定と、指導者がいる習い事を入れるなんて…きついなあ…と思ってしまいます
いくら子ども自身が楽しんでいるように見えても、時間設定と指導者のいる環境で過ごしているのは学校とさほどかわりはありません
無意識に、緊張しているし、まず、自分の頭で考えて、自分で自由に行動している状態とはかけ離れています

せかせかタイプには原因があります
ほとんどの場合、大人がその原因になっています
学校の先生も度が過ぎる場合はもちろんですが、ご家庭内でその傾向を強めているのも事実です

でも、どんぐりの取り組み上では、せかせかタイプを1日でのんびりタイプに変えることはできます

さて、上記のような添削をしたあと、私は新入会のある子に言いました
しっかりと目を見て、ほほ笑んで、ゆっくりと話しました

「学校では短い時間にたくさんの問題を解いて、できた人から先生のところへ持っていったりするでしょう?頑張って急いでやってるんだよね。でも、ここは学校とは違うことをわざとやっているんだよ。来ている時間の中で、1問でも2問でもいい、ゆーーっくりでいいから、頭の中でぱぱっと答えがでちゃったな~って思っても、わざと、それをここに描いてみてくれるかい?どんぐりはそれをわざとゆっくり丁寧にするためにあるんだよ。だから、急がなくていいし、最後の答えが合っているかどうかなんて考えなくていい。問題文が順番に、全部絵にできているかどうかを、私は最後にゆーっくり見ていたでしょう?それだけが一番大事なんだよ」

その子は「うん」と頷いて、最後の問題に取りかかりました
具体的に、どういう風に絵を描くように、とか、ここをこうするように、なんて教えていないのに、次の作品は別の子が解いたような、ユーモラスで工夫が満載の、素晴らしい絵図でした

「ああ、こんな風に線を描いて考えたんだねえ…わかりやすいなあ…」私は聞こえるか聞こえないかわからないくらいの小さな声で独り言を言いながら、添削をして返却しました

もし、次の時にまたその子が、この日のことを忘れてまたせかせかと雑な絵図を描いたら、また私は同じ事をするつもりです
ゆーっくりブツブツ言いながら添削をして、独り言を言って…

どんぐり学舎を出る時には、みんなの背中がちょっと柔らかくなったように見えます

ご家庭では、どうですか?

どんぐり学舎でも、「毎週、リセットされちゃってるな~」と思う子はいます
学校以外の場面でも、忙しく過ごしているのねえ…という子は…
まさかそれが家庭内ではありませんように…とお祈りはしていますが…

普段の生活から、ゆっくり考える時はゆっくり考えることができる、じっくり丁寧にすべきことはじっくり丁寧にする、そんなことを心がけてみるといいですよ
そして、時間設定と指導者のいる環境は、できるだけ減らして、子どもが自由で気ままに過ごせる日をできるだけ多くすることです

それっ!いそげーーー!ってせかせかする時間があっても、モード切替が自在なら、問題ないのです