夕べ、DK1年生の数学の質問に対して解説をしていて、
思いました
これってどんぐり問題よりずっと簡単
これが中1数学の問題
 
子どもが何人かいて、リンゴが何個かあって、
9個ずつ配ったら5個足りなくて、
7個ずつ配ったら5個余って…
で、リンゴは何個で子どもは何人なんですか?
っていう問題なのですが、
これは、子どもの人数か、リンゴの個数をXに置き換えて方程式を作ると、
簡単に答えが求められるのです
まあ、私のおすすめは子どもの人数を置き換える方の方程式なんですけれど
リンゴだってできます
そして、
Xを使わなくても解けます
これが、どんぐり問題

ミジンコ組のアリンコさんたちを、ゲームをするためにチーム分けするのですが、
60人ずつにすると24人の半端が出てしまい、
同じグループ数で63人ずつにすると、最後のグループでは6人足りなくなってしまう、
このミジンコ組のアリンコの数って何人なんです?
っていう問題なのです
数値もさることながら、思い切り中1の問題より難解でしょ
しかも方程式を使わないんです
今まで、この問題の解き方はいろいろ見てきましたが、
この子の解き方が割と多かったかな
まず、グループ数を1つとした場合のクラスの人数を2通り考えるわけです
60人ずつ1グループ作ったら24人あまった、ということは、84人いる
63人ずつ1グループ作ろうと思ったら6人不足、だから57人
そこから考えて、
2グループだったら60人の場合は120+24=144人
63人の方は126-6=120人…
と、1つずつグループ数を増やして検証しているようです

この手の解き方を、私は「積み重ね算」と呼んでいますが、
たとえば、ジュースとケーキで体重増加をはかる巨大パンダの問題なども、
1セットで1.2㎏、2セットで…とだんだん増やしていって、
答えにたどり着くパターンで解く子が多いです

ちょっと計算の得意な大人が見ると、もどかしくて、
「ああ!!そこで10倍すればすぐに答えに近づくのに!」とか思うのでしょうけれど、
私は、いかに面倒な作業を嫌がらず自分からしているか、という部分にいつも着目し、
感心しています

このアリンコの問題を解いている時もこの子は、本当に楽しそうに、
わくわくしながら、もうすぐもうすぐ!と計算して一致するのを楽しみにしていました
楽しみにしている時点で、この解き方に確信を持っているのがわかります
もちろん、途中で計算ミスをしたり、そもそもの最初の仮説が間違っていたりして、
どこまでいっても一致しない、という経験もしているのですが、
それでも、そんな経験を経て、
この問題を解いたときには随分と周囲の絵がすっきりとしているので、
確信を持って積み重ね算を始めているのがわかります

注目すべきは、「数感覚」のバランスがいかにとれているか、という点です
60人ずつにわけて、24人あまる、というケースと、
63人ずつにわけて、6人足りない、というケースを、
両方絵に描いているけれど、いずれにせよ、表しているのは
このアリンコの人数である、という確信
「あまる」「足りない」を式でなく絵で描いて、その後もそれを元にして思考している様子から、
迷いは感じません
しかも、1グループの場合は、2グループの場合は、と、グループ数も一致している状態で求めている、当たり前ですが、問題文を読めば、「クラスの人数」と「グループ数」は変わらないのですから、そこの部分が「等しい」ことは大前提として考えているのがわかります

ところが、上の中1の問題に戻ると、
この手の問題で、「どうしてこっちが+5で、こっちが-5なのですか?」という質問は相次ぎます
まさか、足りない時は-5,余ったときは+5などと教えられたり覚え込んだりはしていないはずですが、どんぐりを離れるとすっかり「あれ?あれれれ?」となってしまうどんぐりっこも少なくありません

中学生になっても、迷ったら絵を描けばいい、私はいつもそう話しています

そして、小学生でいる間、この「方程式による解き方」を使い始める前に、
できるだけ多くの数体験をしておくことをおすすめします

どうして計算が速くできることや、
大量に正確に解けることを追求するのでしょうか
小学生時代にそんなことをしてしまったら、
子どもたちは何も考えずに数字を数字としか見ず、
その分量や、感触、感覚もイメージできないまま、「できる」と思い込んで数学の世界に突入します
小学校時代の算数では遅れをとっているように見えず、
割とよくできる方だったと思っていたのに、
中学生になって数学がまるきりわからなくなってしまう子は多いです
当たり前のことですが、学年が上がるごとにますますわからなくなりますから、
その時点で、数学を「得意」にするのは不可能に近いです

それでも、楽しかったらそれでいいのです
先ほどのどんぐり問題でも、実はもっと効率的な解法があるかもしれないのに、
もうすぐ一致する!とわくわくしながら面倒な計算を続けた子
一切面倒がらず、同じテンションで、楽しみながら取り組んでいました
*ちなみに中学生になったこの子は、数学で一度も躓きませんでした

大切なのは、
身近な大人がこの面倒な作業を遮らないこと、
もっと効率的な方法があるよ、と教えないこと、
そして、たくさん間違えても、迷っても、それでいいんだよ、と受け止めることです

そして、できるだけ、子どもらしい子ども時代を満喫してください
不思議なことを不思議だな、って思えること
きれいなものをきれいだね、って思えること
大人なら誰でもできるようなことを子どもに先取りさせず、
子ども時代にしかできない経験をたっぷりさせてください
それは、いつからいつまで?
生まれてから、小学校を卒業するまでたっぷりと、お願いします

それが数学と何の関係があるの?
と、思う方もいるかもしれません

私には、見えている、ただそれだけです
数学だけじゃありません
全ての学問において、その根底に絶対に必要なことなんです