※長女の6年生の時の「割合」のプリント
 最初は公式通り解いていなくて、全問×でした
 長女の立てた式の意味がわかりますか?
 見ているだけでわくわくします

どんぐりは、学校の進行と違うから、学校の勉強は学校の勉強として、やっぱりちゃんとやっておいた方がいいのではないでしょうか、という質問を受けました
それから、宿題をマシーン稼働でやっていたり、免除やアレンジで量を少なくやっていることがちょっと不安です、という正直なメッセージも届きました
今日は、そのことについて書こうと思います

学校の勉強、っていうのは、教科書と、学校の先生の授業、つまり、国の決めた学習指導要領にのっとった勉強、ということだと思うのですが、その順番通り習得させたいわ、という場合は、教科書を合わせ読みすればいいと思います
でも、学校で授業を受け、学校から指示された宿題をきちんと完璧にこなせば、間違いなく学力がつき、中学校や高校へ進んでもまあまあ困らないだけの学力が身につく、という保証はありません
同じ時間授業を受け、同じ分量練習したとしても、習熟度は子どもによって差が出て、1回読んだり見たりしただけで覚えてしまう子もいれば、何回書いても覚えられない子もいます
宿題が何のために出されるかについては、前回のブログに書きましたので、ここでは書きませんが、「ちゃんと覚えているのか」「ちゃんと理解できているのか」ということに関しては、「学校の勉強をちゃんとやっておく」こととは違った次元の話であることは申し上げておきます
そういうことをチェックしない条件で、学校の勉強は、順番通りに目に入れておく意味はあると思います
たとえば、学校に毎日通っている子なら、自然と授業を受け、その通り目にすることになります
学校に行かない選択をしている、または、フリースクールなどで教科書等を使わない日常を過ごしている場合は、家庭で「教科書の読み合わせ」をしておく必要性は感じます
糸山先生は、「教科書は共通言語だから」とおっしゃっています
教科書なんてくだらない、授業なんて意味がない、なんて私は思っていません
そういう「排除」のような考えが、あまり、子どもと過ごす上では、必要でない気がするのです

でもね…
以前、脳科学者の茂木健一郎さんがどんぐり式について質問に答えていました
どんぐり式について詳しく知らない状態で答えていらっしゃるのは伝わってきました
でも、「絵に描いて考える、ということはとてもいい方法だと思います」と書いていました
そして、「でも、それだけではなく、計算練習をたくさんしたりするような、反復練習も必要なので、両方をやったらいいと思いますよ」というようなアドバイスがありました

そうなんですよ
両方したらいいんですよ
宿題もたくさん、漢字練習だって、計算ドリルだって、同じ文章を3回読むという音読だってね
その後で、どんぐりを楽しんで、夢いっぱい思考いっぱいに豊かに解けばいいんです

なんてね

無理なんですよ
普通、無理なんです
こればっかりは、30年近く子どもたちと過ごしてきた私の経験からの確信です
あっちもこっちも、いいとこ取りができる合理性は子どもにはありません
まず、エネルギー不足で途中で止まってしまいます
そして、子どもの脳は「楽なほう」を選択します
エネルギーが限られているので、あまり深く考えずともこなせる、作業的なものを選ぶようになります
そして、それをこなすことで褒められたり、認められたりすることで、
どんどん、承認欲が簡単に得られる方へ進んでいってしまいます

とても素敵な子をテレビで見たので、彼が出版した「勉強法」の本を買って読んでみました
とあるクイズ番組で何度も優勝しているのですが、難問をどうやって解いたのか?とインタビューすると、彼の考えたすじみちや、生かしたヒントが本当に素晴らしくて、美しくて、いったい、どんな脳をしているのだろう、と興味を持ったのです
表情もとても穏やかで、素直で、学ぶこと、考えることを楽しんでいるように見えました

東京大学医学部在学中に、司法試験に合格した、という彼の「勉強法」は完璧でした
彼にとって、それは「普通」のことだったんだと思います
確かに、その通り、彼の勉強法を実践すれば、彼のように、目標を達成することができるのかもしれません
でも、
たぶん、普通じゃない
「普通、無理なんです」とさっき書きましたが、彼は、その「普通」ではなく、「無理」でもなかったんです
彼のことを何も知りません
生い立ちも、幼少期のことも何も知らないので、なんとも言えませんが、
彼は、間違いなく非凡な方です
もちろん、生まれ持った、優れた能力もあるのかもしれませんが、親御さんがその能力を最大限に生かすべく、なにか、したのかもわかりません
ただ、おそらく、どんな努力をも厭わない、そしてなにより、「普通」と比較すると、膨大なエネルギーを持ち合わせた子どもだったはずです
茂木さんも彼と同じ大学の出身ですから、「その両立は簡単なこと」とおっしゃる根拠はご自身の体内にあると思います

平凡な能力をやっと持ち合わせているだけの「普通」の私から見ると、彼らの主張は「普通」ではないのです

でも、もし、普通だと思ってどんぐりと一般的な学習法を両立させないように育ててしまったら、あらあら、非凡な才能のすんごい子だったわ!と後悔することもありません
だって、どんぐりは、子どもの思考力を限定するような方法ではないし、パターンさえ知っていれば何も考えなくても解ける計算問題を繰り返し解くこととは比較にならないほどエネルギーを使う、つまり、鍛えられるからです

むしろ、普通だと思っていた子が、どんぐりによって飛躍する、という可能性があるのです
計算練習をしていたら、飛躍した!という例はないはずです
そういう意味で、両立は難しいのです、とだけこの問題に関してはお応えしておきます

さて、それでも、学校のテストの点数や、答案を見て、「大丈夫かしら」と思うこともあるかもしれません
そのために、どんぐりでは「わからん帳」を作ることを推奨しています

私の教室でも「Qノート」というわからん帳を作ることになっています

小学生の間は、最初は親子一緒に、テストのミスを切って貼る、という作業を楽しくするだけです
正答を貼付するか、大人が書いてあげるかして、作成は終了です
ここまで作ったよ!と提出してくれる生徒さんの状況を、私は把握できるので助かっています
提出していなくても、お家で作っているものと思っています
これは、
小学校を卒業するために必要な作業だからです

以下、学校内容についての私が書いたメールのコピーを公開します

小学校の教科書を読んでみると、
その学年の子どもが「理解できない」表現で書かれているものはないし、子どもがひとりで読んでもだいたいわかる、という構成になっています
 
たとえば、三角形の図が描いてあり、とがった場所に矢印があり、「ちょう点」と書いてあります
まっすぐの棒のところに矢印があり、「へん」と書いてあります
そして、「3つのへんの長さがひとしい三角形を、正三角形といいます」
と書いてあります
 
そのテストを受けた子どもの答案を見たことがあります
三角形のとがった場所に矢印と空欄があり、まっすぐの棒のところに矢印と空欄があり、穴埋めする図の問題でした
 
その子は、両方とも空欄のままで、×をもらっていました
 
また、別の問題で、
「3つのへんの長さがひとしい三角形をなんといいますか」という問題に、
「さんかっけい」と書いて×になっていました
 
この答案を見ると、この子が何ができなかったのかはわかりますが、何がわからなかったのかはわかりません
教科書にまるごと書いてあり、そのまま出題されているだけなので、私の想像では、ただ忘れてしまっただけ、または、空欄になっている意味がわからない(出題の意図が理解できていない)のどちらかだろうな、と思います
 
これは、中学校も同じですが、全ては教科書に書いてあるので、教科書に書いてあることがテストで書けないとしたらそれは「わからない」とは違います
 
学校の授業は教科書で進められ、(中には、オリジナルのプリントで進める先生もいますが)その内容を確認するためにテストが作られ、実施されています
テストの意義とか意味とかは置いておいて、ともかく、授業で扱った内容がテストに出されるとこういう形になるんだ、ということを理解しないと○はもらえません
 
もし、テストで点数がとりたいなら、テストってこういう形でこういう風に聞かれるんだよ、っていうことを理解させる必要があります
でも、子どもは、何回かテストを受けると自分でそれくらいはわかってしまいます
 
大事なのは、テストの前に準備をしないことです
テストでいい点数が取れるように練習してはいけません
テストを受けて、間違えた問題をコレクションしておくだけです
それがわからん帳です
わからん帳を作るだけで、テストの出題形式も、どう答えればよかったのかも全て理解できます
1年生から作り続けて、6年生になったら、それを最初から解き直していきます
小学校6年間の内容は、健康な脳を持っている子どもなら、1ヶ月ほどで復習でき、理解できるくらいのものです
 
どんぐりをやっている場合、教科書の「こう解きなさい」と決められた表現に疑問を持ち、混乱することがあります
混乱した子どもは、私に質問してきます
確認するような聞き方です
「これって、こういう風に考えてもいいんでしょう?」
先週も、わからん帳(どんぐり学舎ではQノートと呼んでいます)を持ってきて、開いて、「さとちゃん、この解答の意味がわからないんだよ」と割合の問題を質問してきた子がいたので、絵を描いて説明してみました
「学校では教えないかもしれないけど、こういう風に考えてもいいんだよ」と一緒に確認しながら解いてみました
「割合」って、学校では「公式」で教えるので、どんぐりで割合の思考を経験済の子どもには混乱する箇所なんです
割合本来の意味を説明し、絵図で表現すると、その子はすっきりとした表情になりました
子どもは、納得できる理由が知りたいんですよね
 
糸山先生がおっしゃったことがあります
どんぐり倶楽部良質の算数文章問題では、2mxまでで小学校で学習する全ての内容を網羅している、と
5年生で割合の学習をすると、学校の解き方に疑問を持った生徒が毎年質問してきます
どんぐりが進んでいる子の場合、割合の思考はとっくに経験済なので、教科書に出てくる解き方のメカニズムを読み解くことができます
なるほど、あの考え方をこういう風に説明することもできるのか、
 
そういう子どもの気づきを目の当たりにしていると、
どんぐりで進めていくことの強さと、学校の勉強があとからついてくることがよくわかります

以前にも書きましたが、どんぐりを解くことによって、国語の読解力や算数の論理的思考力を育てる、というわかりやすい言葉で説明しきれないほどの、思考の基盤を作る、どんなことを勉強する上でも役に立つ頭脳の基礎が整う、裾野が広がる、というようなイメージがあります
それが、糸山先生のおっしゃる、ハイブリッドブレーンなのだと思います
 
そこで大事なのは「素直さ」でもあります
素直さ、柔軟さ、子どもらしさ…これは、机の上で育まれるものではありません
学校でこう習った!違うじゃん!どんぐりと学校って違う!嫌い!ってならないってことです
ああ、そういうことか、と繋がる子と全然違いますよね
これもあり、あれもあり、どっちもあり、とニコニコ受け止める子たちが実際に私の近くには、たくさんいるのです
 
そういう部分が、子どもとの日常生活で育まれる部分かと思います
 
間違っても不安に思う必要はありません
わからん帳をしっかりと作っておきましょう
テストで思い切り間違えるといいんです
テスト前に繕ったら本当にどこまで理解できているのかわからなくなります
 
漢字と、算数全部、が小学校のわからん帳です
6年生になったら楽しく解き直せるように、素敵なノートを親子で作っておいてください
 
あとは、どんぐりを丁寧に進めるだけで大丈夫です
 

わからん帳は必ず作りましょう
6年生になるまでのお楽しみを、集めておきましょうね

もしかして、
漢字練習をすればするほど漢字が書けるようになる、とまだ思っていますか?
計算練習をすればするほど算数や数学に強くなる、とまだ思っていますか?
本当は必要なんじゃないだろうか…と思いながら宿題制限をおずおずと申告していませんか?
親が心から理解し、納得していなければ、子どもにその気持ちは伝わってしまいます
コロナ前、千葉のどんぐり先生、金森先生のワークショップが全国行脚して、親が子どもの宿題を体験する、ということをやってみたことがある方もいると思います
私の教室の保護者さんたちもワークショップを企画して、金森先生に高崎まで来ていただきました
実際にやってみると、はっきりとわかると思います
こんなことを続けていても、思考力は育たない
むしろ、こんなことを何の疑問も持たずにやらされたままでいることが、
どれだけ危険なことか
わかると思います
それが「当たり前だよ」と言われて、強制された子たちが大人になって、
どんな世の中になっているのか、
少し考えたら、すごく怖くなりませんか
最後の最後に大げさな話につながってしまったのですが…
私の脳裏には、子どもの頃、父が言っていた言葉が張り付いてはがれないのです

考えるために頭がついてる
考えることをやめちゃだめなんだよ