今週は漢字IF法を実践しました
どんぐり倶楽部糸山泰造先生の考案した「一度も書かずに漢字を覚える方法」です
どんぐり学舎では、このImage Fix法、略してIF法を推奨していますが、これまでなかなか私が直接子どもたちに伝授する機会を設けませんでした
御家庭で、親子で実践できると思っているからです
それは、どんぐり問題も同様です
糸山先生はいつでも、健全な形で、家庭で、親子で実践できる学習方法を考案、開発してくださっています

さて、
上の文字を大きく印刷した紙を見せて、私は子どもたちに問いました
「この字、なんていう字でしょうか!?」
「サバ!」「サンマ!」
高学年の子は勘がいいです
さかなへんが気になったのね
…お寿司屋さんの湯飲みに書いてありそうでしょうか…書いてないな、たぶん
これは「ワニ」です
*正解が出ないので、私がジェスチャーでヒントを出したらようやく正解(笑)

さあ、それじゃあ、この字をよーく見て
おしゃべりしない、相談しないでひとりで集中してよーーーーく見つめてね
どんな字かな
どんな形かな
じーっと見て…

はい、目を閉じて

頭の中で書いてみて
どんな形だったかな
どこに何があったかな
あれれ?こっちはなんだっけ

はい、目を開けてもう一度見ていいよ

ああ、ここはこんなだった
ここがイマイチ覚えられなかったんだよね、ってところをじーっと見て
目で写真撮って
じーーっと

はい、また目を閉じて頭の中で書いてみよう
今度はいける
どうかな?
あれ?
うん、大丈夫
たぶん、大丈夫
念のため…

はい、もう一回見てごらん

そうそう、そう、大丈夫だ
もう書けるよ
もう一度しっかり見て
細かいところまでよーく見て
じーーっとじーっと

はい
じゃあ、
隠すよ

じゃあ、書いてみよう
できるだけ大きく書いてみよう

わに

全員が書けたので、
漢字の近くに鰐の絵を描いてもらって、記念撮影しました

一度も練習しないで覚えることができました
そんなの、見てすぐなら誰だって書けるんじゃないの?
と、思われるでしょうか
それなら同じ漢字を何度も書く練習だって同じです
何度もたくさん反復して書いたから、記憶が定着する、なんていう科学的根拠はありません
私たちの脳の、
覚えたそばから忘れていく仕組みは変えられません
じゃあなぜ私たちは忘れずに漢字などを覚えているのか、
そして、なぜ覚えたのに忘れてしまうのか
みなさん(親御さん)ご自身が、子どもの頃たくさん勉強したり練習したりしたことを、全てくまなく覚えていらっしゃるのならその方法をぜひ伝授していただきたい
常人ではない記憶力の持ち主さんだとしたら常人の私たちに伝授いただいても継承不可能ですが…
受験勉強を自分で工夫して頑張っている学生さんが紹介している「忘れない記憶法」などを見ていると、やはり、忘れてしまうことを前提に対策をしているのがわかります
当たり前ですが、復習する以外に記憶を定着させる方法はありません
漢字の場合は、日常的に使っていればそれが復習になりますが、最近では大人でも、手で書く機会が減ってすっかり漢字を書けなくなってしまった、と嘆いている人が多い気がします
嘆いても、すぐに検索できる大人は困らないのでしょうけれど
困るのは、現役学習中の子どもたち、生徒たちです
どうやったらずっと覚えていられるのか
それは、シンプルにやっぱり「復習する」しか記憶を持続させる方法はありません
同じ時にたくさん、反復練習することは「復習」ではありません
数日おきに少しずつ練習するのが復習で、それを持続すれば一生忘れることはないでしょう
たとえばこの「鰐」という字を、3日おきに思い出しては1回書いていたら、1年間でも、10年間でも、一生でも覚えていられることでしょう
でも、
漢字は、小学校で習得するだけで1000文字以上あり、中学校でも同等数、それらを組み合わせた熟語や、熟字訓、漢字にまつわる知識などを合わせたら天文学的な数の漢字の使い方を覚えなければならないほどの量あります
それらを、3日おきに全部、復習することなど不可能です

じゃあ、どうしたらいいのか

私たちの身の回りは漢字で溢れかえっています
ここは日本で、漢字は中国からいただいた文字だけれど、日本語に不可欠なツールのひとつです
あらゆるものに漢字が書いてあります
本にも新聞にもお菓子のパッケージにも電化製品にもお店の中の案内板にもレストランのメニューにも駅にも登山中の案内表示にも道路標識にもなんなら道路にも、漢字が書いてあります
こんなにたくさんの漢字に囲まれているのに、子どもたちの多くは漢字が嫌いで、覚えていられなくて、テストで間違えてばかり、と親御さんも悩んでいるようです
まあ、小学生に漢字のテストをすることそのものが、すぐにやめてほしい逆効果な行為なのですが、とにかく、子どもを漢字嫌いにさせないこと、それが、一番手っ取り早い漢字習得方法、漢字を得意にする方法なのです
そう、漢字に興味がある子は、身の回りの漢字を自然と視界に入れ、興味を持って見ている、それが予習や復習になっているのです

勉強は「漢字を覚えること」だけではないので、これだけやっておけばいい!ということではなく、全てにおいて、子どもの興味を削がない、子どもの好奇心を削がない、子どもが本来持っている、向学心、好奇心、向上心を大切に育むことが何より大切なのに、多くの方が、子どもより先に手を出し、手を引き、子どもの好奇心など気にもせず、将来困らないように、明日のテストで間違えないように、と大人の意志で子どもをコントロールしようとしてしまっています
大人にその気持ちがある限り、結局子どもは、無意識でも自分の心を無視されているように感じて、なんだか前向きになれないまま、成長していくのではないかと思うのです

だからって赤ちゃんや幼児のように、本能のままに好きなことを好きなだけさせておけば健全に育つのか、というとそういうことでもありません
園児時代の子どもには園児時代の、学齢期の子どもには学齢期の子どもに、適した環境設定と導き方があり、寄り添い方があるのです
それを提案してるのがどんぐり倶楽部なんです

漢字練習が好きだ、という子に会ったこともあります
その子は「何も考えずにただ書けばいいから」と微笑みました
その他の行動を見ていても、脳が疲れているんだな、とわかりました
子どもが「何も考えずにできて楽だ」という言葉を発する時代になったな、と20年程前に出会ったその子を見て少し怖くなりました
「何も考えずにできて楽」ということが好きな子に、向学心はなく、勉強面以外でも、努力が持続しない子でした
私といろいろな話をしたり、新しいことを一緒に学んだりすると、ぱっと火がついたように好奇心をキラキラさせますが、持続しません
翌週会うころには、また火は消えています
まるで、太さ数ミリ、長さ1㎝の小さなろうそくに火をつけているかのようでした

中学生になり、やらなきゃいけない、って頭ではわかっているのに、体がついていけない、心がついていけない、と悩んでいました
本人がどうすることもできないと嘆き苦しんでいるのに、親御さんは、本人の努力不足だ、と責め続けました
ミニろうそくに加え、その子の脳は小さなガラスのコップで、すぐに満たされるんだけどその中身を捨てなければ新しい物が入らない、という状態に思えました
*私の身近にいる、地頭が育っているどんぐりっこたちの脳内は、自在に形を変える大型のバケツのようなイメージです*
高学年で出会ったその子に、私は小学生時代は、親御さんにできるだけ、子どもの本質について説き、その子を取り巻く環境を見直すよう、何度も忠告したつもりでした
大量の習い事、大量の宿題、そして、返却されたテストの結果によっては家庭学習の監督
小学校時代のテストではいつも満点、中学校1年生までは学年トップを走っていましたが、2年生の中盤から学校に行けなくなりました
それでも、自分に甘すぎる、と特にお父さんがその子を責め、やっと私の話を理解し始めたお母さんのことも責めていました

その子が行動で示したことは、
勉強そのものへの反抗ではなく、ご両親へのメッセージであることは客観的にこうした話を読むとおわかりいただけるかと思います

話がいつもながら飛躍してしまいました

とにかく、漢字を嫌いにさせないで

こんなに便利で面白いツールはありません
宿題で書かされるから、
テストで書かされるから、
正しく書かないと叱られるから、
なんて出会い方をさせたら、いっぺんに嫌いになってしまいます

来月はどんな漢字でIF法をしようかな
おうちでも試してみてください
大きくお手本の字を書いてあげれば同じようにできます
どんぐり学舎では「塗り漢字」というIF法のための補助教材も販売しています
本当は、できれば子どもの顔くらいの大きさの漢字1文字がいいですね!
大きく、大きく、楽しく、楽しく、
取り組んでみてください