期間限定で試験的に開講した小学部どんぐりっしゅコースの教材です
来年度は実教室では休止し、オンラインでできればいいなあと考えています
まだ考えているだけですけど…

小学校から英語の授業が必修化されて3年が経ちました
私の体感としては、
中学生になってからの英語学習において、その力は小学英語必修化の前より低下傾向にある、英語の苦手な子、英語が嫌いな子が増えている、と感じます(詳細は忘れましたけど、数ヶ月前、そんなデータが公表されましたね)
それは英語に限らず、日常で言葉を工夫して豊富に使う機会が減っている、というのが一番だと私は考えています
言葉を使わなくても用事が済んでしまうことが増え、
いま、小学生以下の「親」をしているみなさんが、
言葉を工夫して豊富に使っていない、という自覚がないことが原因かと思われます
だから、
もし、中学校で本格的に勉強を始める英語や、入試の英語に向けて、力をつけてほしいなあって思っているならチャンスです
以下、
私がどんぐりっこの保護者さんからの小学生英語に関する相談に回答したメールをご紹介します

日本にいながら英語を学び、英語力を高めるためには「日本語力」がとても重要で、
されに、中学英語でもし「よい点数」をとりたいなら、
「書くこと」「読むこと」が嫌いじゃないこともとっても重要です
 
どんぐり問題を解いている時には、問題文を理解し、読解力もついてきたなあ、と思われたような子でも、文章を書いたり読んだりするのがいまいち好きじゃないなあ、っていう子に、語学の学習はなかなか難しいという傾向があります
 
どんぐりは解けていたので地頭はいいのですが、英単語を正確に綴ることや、英文法をしっかりと規則的に覚えることが難しいという子は少なくないんです
 
自由で自分なりの工夫でいい、というのとかけ離れていますからね
 
でも、やっぱりずば抜けて英語も得意になってしまう子も一定数います
これもまた、どんぐり問題での読解力や、ちょっとした言葉の差異がわかる語彙力のようなものが強い子なのですが、いずれにせよ、なんとなくその二者の違いは「性格」「好奇心の方向のちがい」なんじゃないかな、って思うんです
 
英語を学ぶということは語学を学ぶということで、
海外暮らしや英会話教室で英語を使ってコミュニケーションをとることは語学を学ぶこととは違い、生活に必要なスキルを身につけること、掃除や料理の方法を覚えるのと同じように、慣れることが大事です
語学はただ慣れるだけではなく、特に「テスト」では正確に書くことしか許されないわけですから、英語以外のことでも正確に書くこと、そして、書くことを嫌がらない状態であることはとっても大事なんです
 
それは、実は英語の勉強を始める前にちらっと見える特性のひとつなのですが、
お子さんはどうですか?
(日本語の)文字を書くこと、正確に書くことを嫌がりませんか?面倒がりませんか?
そもそも、言語そのもの(日本語でいいんです)に興味はありそうですか?
 
小学生の間は、まずそのことを念頭に、日々の生活で日本語力を高め、言語への興味が自然に沸き起こるような環境を整えるといいと思います
 
まずは、お子さんの日本語力、そして、日本語など言語に対する興味や好奇心などについて、見てみてください
 
このメールを読んだ相談者の保護者さんからの返信に、
「英語でコミュニケーションをとること」と「語学を学ぶこと」の違いについて、私の中で明確でなかったことに気付かされました
と書いてありました

そうなんです
小学校英語が必修化されて3年、「やっぱりスペリングと文法じゃん」ってなっている地域や学校もあるようですが、私の知る限り、「英語に親しむ」「会話を丸暗記する」というような内容の授業を進めているところが多く、子どもたちに聞いてみると、英語の授業では英語で好きな国やスポーツなどを紹介したりするプロジェクトには挑戦するようですが、文法的なことは教わっていないため、その単元で、その文は何かから書き写して書けたとしても、その後に残っていない、繋がらない、ということがとても多く、ごく基本的な、aから始まる単語を集めて、これなんて読むの?って聞いても全然わからない~みたいな状態です
でも、小学英語必修化以降、中学校英語の始まりは「小学校で習ったでしょ」というスタンスです
だから、最初に述べたように、必修化前より英語の苦手な子が増えている感じがするんだと思います

小学校の英語の教科書を見ても、中学校の教科書より易しくしなければならないためか、文法的な用語は一切書いておらず、こういう時はこういう表現を使います、みたいな例とドリルが載っていて、ひたすらその単元では反復して覚えさせるのかもしれませんが、日常で使っていない言語を体得するのはとても困難だと思われます
実際に、これを通過するだけで覚えてしまって英語を使えるようになる子はほとんどいないのですから

思えば中学校の英語の教科書も、20年前くらいのと比べると随分と内容が英会話に寄せられてきました
英語を日常的に使う人たちや、英語ネイティブの人たちからすれば、文法なんかよりまずはいろんな言い回しを覚えて、そのあとで、文法を知ればいい、というご意見なのでしょうけれど、英語を日常で使わないし、聞こうとしなければ聞く機会もなく、毎日、日本語だけに囲まれて生きている私たちにとって、「言い回し」を覚えることがどんなに困難なことか、ぜひ、全く聞き慣れず、見慣れない他の言語を習得しようとしながら想像してみてほしいのです

中学校のテストでも入試でも、文法的に正しいかどうか、スペルが正確かどうかより、言わんとしていることが伝わっているか、コミュニケーションがとれそうか、っていうような評価基準であればそんな感じの授業内容でいいけれど、実際にはスペル1文字違えば失点、文法的に模範解答と違えば失点
中学生の英語のテストの答案で「これは正解でもいいんじゃないか?」というものに関して、私が英語を専門に学んできた同業者や、英語ネイティブの友人に相談すると「確かに」「これで正しい」という意見なのに、中学校の先生は×にする、という実情です
群馬県の公立高校入試では(今年は改革されるので不明ですが)英語の出題の1/3が自由英作文で、その採点基準は明らかにされていません
模試では細かな基準で減点されますから、それを基準に、練習では心を鬼にして、「文法的に正確に」「スペルミスも許されない」とやっていくしかありません

そんな中学生の受験英語の世界ですから、何を準備しておけばいいかって、私は、これまで見てきた生徒たちの傾向から分析するに、前述したように「言語を学ぶ」という基本姿勢が整っているかどうか、というところが重要だと考えるのです

言語を学ぶのに、「読むのが嫌い」「書くのが嫌い」なんて性質だったらそれはとても習得は難しいでしょう
数学を学ぶのに「数字が嫌い」「計算が嫌い」って子が得意になれるわけがないのと同じです
嫌いなものを好きにさせる魔法はないですから、何かのきっかけで中学生になる段階で「嫌い」なのだったらまた何かのきっかけで「好き」に変わるのを待つしかないかもしれません
地頭はよくて、どんぐりも解けたけど、英語はどうしてもできない、という子の傾向は、やはり、「読むのが嫌い」「書くのが嫌い」な子達です
英語だけでなく、日本語の文字も数字も、正確に、丁寧に書くことがあまり好きじゃない、得意じゃない子たちです
それは、なんというか、癖みたいなものもあって、幼少期からの習慣だったり、好きな方面の違いだったりするので、その子自身に問題があるとか育て方に問題があるとかではなく、脳の傾向とか、特性みたいなものだと思います

でも、
どんぐり問題を解いていても個性が見えるところですが、生活が穏やかでゆっくりで保護者の言葉かけが丁寧でゆっくりだと子どもも丁寧でゆっくりになることがあるのは何かヒントになるかもしれません

慌ただしい生活や、時間に追われる生活の中で、ゆっくりじっくり丁寧に何かを書いたり読んだりすることを好むというのは難しいだろうなあ、と想像すればわかりますよね

結局そこなんだろうなあ、小学生は暇なのが一番だってことなんだろうなあ、って思います

それから、最近テレビの音声も動画の音声も、倍速みたいな速さで流れていて、それを日常的に聞いている子も言葉が雑です
何を言っているのかわからない子も多いし、自分1人で納得して何か言っているけど、相手に丁寧に伝えよう、という気持ちがこもっていません
それも、
日常的に何を見聞きしているかで大きく違うと思います

毎日無料で4技能の練習ができる母語の日本語を、もっともっと豊かに浴びて、使いこなしておくだけで、新しい言語を学ぶための準備はじゅうぶんできるのです

ちょっとした言葉の違いに、「なんだろう」って興味を持つような、
「今のその言葉、なあに?」って親の話す言葉に興味を示すような、
双方向の言葉のやりとりを楽しめるような、
そんな「母語」の豊かな環境で満たすだけで、
言語を学ぶ準備は整っていきます

御家庭でできる準備は、
ちゃんと言葉を使うこと
子どもが何も言わなくても察してあげるのは、良いときもあるけれど、よくないときもあります
ちゃんと言葉で伝え合うこと、
ちゃんと言葉で説明をすること、させること、押しつけたり義務化したりするのではなく、親の方から率先してそうしていれば、大人同士そうしていれば、自然と子どもは真似ることでしょう


この夏、私は旅行のお土産で、小さなお菓子を生徒たちに配ったのですが、
そのお菓子のパッケージにはその土地の伝統芸能や名物などについて英語で説明が書かれたものがデザインされていました
夏だけ、外国人旅行者が多い場所でもあったので、そういうお菓子が昔より増えているなあとは思ったのですが
ある中学生の御家庭から、後日、「お菓子のパッケージが綺麗で、しばらく子どもと眺めていて、書いてある英語がなんだろう、ってことになって、一緒に辞書で調べて訳してみた」という話を聞きました
もしかしたら親御さんは、辞書を引かなくてもわかったかもしれません
でも、子どもがまず「なんて書いてあるんだろう」って不思議に思ったこと
その気持ちを丁寧に受けとめたこと
そして、一緒に辞書で調べてみたこと
とても素敵な時間ですよね
そして、とても知的な時間ですよね
それもそうなのですが、私は、
「パッケージが綺麗で、しばらく子どもと眺めていて」というのを聞いて、
なんて素敵な家庭環境なんだろう、と思ったのです
文字だけじゃない
小さな美しいものや、
ちょっとしたことがらに、
心を揺り動かし、それを共有できる家族
丁寧に暮らす、ってこういうことに気づけることなんじゃないかな、って思ったのです

英語?
数学?
社会?

準備は全部同じって気がしてきましたね

子どもと丁寧に暮らすということ
ゆっくりと流れる子どもの時間を、大切に一緒に過ごすということ
忙しい大人のリズムに、子どもを巻き込まない努力
ほんの少しの間です
子どもの心身がまだ幼くて、やわらかくて、ゆったりしてる間だけ
そのペースを守ることを、子どもが起きている間だけ、意識してみてください