先取りして練習しておけば
きっと
よくできるようになるはず
そう信じて、小学生のころからドリルをやらせたり、
計算塾や進学塾に入れて鍛えたりさせたくなるのでしょうけれど、
実際はそんなことはありません
何も考えず、ただただ訓練のような練習をさせた場合、
むしろ、弊害の方が大きいのです
数学だけに限らないのですが、
とにかく、
深く考える習慣、
自分の頭をつかって工夫する思考習慣がないと、
いくらテクニックを教えても、到底追いつけたものではありません
小手先のテクニックでできるような問題は、
入試問題にはほとんどないのです
だから、ありとあらゆる問題を徹底的に演習し、解説するのが塾の役割なんでしょうけれど、
それで伸びる子もいれば伸びない子もいて、
そういうやり方で伸びる子は、
…これを言ったら元も子もないのですが、
元々伸びる要素が備わっていた子達です
それはDNAかもしれないし、
生まれ持った特性かもしれません
ひとりひとり、その要素は違っています
でも、
徹底的に演習と解説を繰り返し努力して伸びる子には、
それなりの特徴があります
先日、
テレビやネットで有名になった秀才の青年が子ども時代の学習方法について対談で話している記事を読みました
彼は「母親の誘導が上手だった」と言っていましたが、なんでも、当時通っていた計算塾のプリントを、1日に100枚解いていたのだそうです
お母様が採点をする間に、次のプリントが仕上がっているかどうか、ゲーム感覚で進めるうちに、面白くなって、どんどんやりたくなって、気づいたら100枚ほどこなす日もあったそうなのです
楽しく勢いづいてそんなにたくさん連日問題を解いていたら、そりゃあ、力はつくでしょうね、と思いました
どんな力かっていうと、
たくさんの問題を集中して解き続ける力です
その力があれば、その後やってくる受験や、資格試験の荒波にも耐えうるでしょう
実際、彼はとんでもない受験や資格試験での成功体験をその後重ねています
じゃあ、早速その方法を真似て、1日に100枚の計算プリントを親子でやってみましょう
そんなことができたら、そんな日々をずっと送れたら、それを子どもが心から楽しんでいたら、もしかしたら第2の彼が降臨するのかもしれません
でも、彼が世に出てきた数年前から、職業柄ちょっと興味があったので彼の著書を読んだり、幼少期のことなどを知ろうとしていると、明らかに、彼が凡人ではないことに気づきました
とても真似できないのです
そう、
夢中になって1日に100枚も計算プリントを解いて、それを、連日繰り返し、楽しんでしまう子どもなど、滅多にいないのです
挑戦して、あー、続かないね、って笑って終えるだけなら真似する価値もあるかもしれませんが、多くの子は、大抵、そういうことが原因で計算することも集中して机に向かうことも、嫌いになってしまいます
それをきっかけに、勉強から遠ざかることもあるかもしれません
とにかく、
それが彼の生まれ持った特性であり、
お母様はそれを上手に伸ばすことができたに過ぎないのです
糸山理論では、お母様が伸ばさなくても、彼は何らかの形で世に出てきたと思います
出る杭は出る、のです
加えて、彼は計算プリントだけをしていたのではないのです
とうてい真似できない家庭環境であり、
思考体験がありました
さて、
凡人の私達の話に戻りますが(笑)
じゃあ、鍛えないで数学や、勉強に集中できる力をつけるにはどうしたらいいの、って言ったら、それは、いつも書いているように、ただただ、日常生活で大人が少しだけ意識すればいいんです
深く、じっくり考える体験が日常的であること
子どもがそういう風にする時間の、余裕がある日常であること
脳が、深い思考や、じっくりと時間をかける思考を避けるような環境をひとまず遠ざけること
ただそれだけで、
子どもは相当賢く育ちます
数学が得意になることが目標ではありません
それはただの副産物であり、目標ではないんです
深く、じっくり考えて、自分の頭を使える子は、
どんな大人になるでしょうか
どんな賢い大人になるでしょうか
先日、
どうしても方程式が解けない子に解説をしていました
カードを作って移項を教えたり、
絵を描いたり、
あの手この手で一緒に方程式を解いてみました
最初に気づいたのですが、
数学が苦手な子は、自分で考えず、
教えられた通りに解こうとするので、
すぐに教科書や問題集の例題を、よく考えずに書き写します
そのまま、数値だけを変えて、解こうとするのです
それでも、全然解けない問題をそんな風に例題を書き写すことによって理解する方法もあります
それは、書き写した後でじっくりと理由を考える方法です
でも、
たぶん、
理由を考える余裕など、数学の苦手な子にはないのです
授業はどんどん進み、
内容もどんどん複雑に難しくなります
つい数ヶ月前まで、正負の数の四則演算にアタマを抱えていたのに、
今度はxとかyとか、なぞの文字が式に紛れ込むのです
自分の頭で考えていいんだよ
何度この言葉をかけたかわかりません
えっ…
いいの?いつでもここに書くのではないの?
いいんだよ、書きたいところ、自分で、ここだ、って思うところに書いて考えてみて
うん…
それなら、こっちに書いて、こことここを足すと…
その子は、教わった通りの方法で、移項の際の項の位置関係に縛られていました
なるほど、だから謎の計算をしていたんだな
抽象的な伝え方になってしまい、申し訳ないのですが、
とにかく、その子は、学校で教わった通りに解こうとして落とし穴に落ちてしまっていました
教えられることなど限られている
全部教えて、全部の解き方を覚えさせることなど不可能なのに、
往々にして学校や、塾では、
教えた通りに解きなさい、と命じます
それでも、自分で工夫したい子、自分で工夫できる子は、
教わったことをベースにしてどんどん自分なりに力をつけていきます
でも、大半の子は、
教えられた通りに解こうとして途中で止まってしまいます
教えられた通りの方法だけでは解けなくなるからです
必ず、解けなくなるのです
学校では教えてくれませんよ、という謳い文句で丁寧な授業をしてくれる塾でも、
やっぱり、全ての問題の解き方を納得いくまで教えることなど不可能です
キリがないんです
それでも、
教えてもらったら安心だから、教えてくれる塾や家庭教師をみんな求めるのでしょう
私の教室では不思議な逆転現象が起きています
実教室、通信生も含め、
たくさんの中学生と今年も勉強している私です
ずーっと昔は、私も例題を解いてみせて、類題で練習してもらい、それから演習を各自進めてもらいました
すると、その間は「わかった!」「解けた!」という気持ちになり、やる気満々の笑顔になるのですが、結局、家で自分自身でなぞらない子、練習しない子は伸びるわけがないのです
教えても、教えなくても、伸びる子は伸びるし、伸びない子は伸びない
これが私の30年の経験での結論であり、
不思議な逆転現象というのは、
教えていない子の方がいわゆるわかりやすく学業成績がいい、という結果が出ていることです
教わってないからわかんない
って言ってみたり、
ちょっと考えただけで、
全部わかんない
こーゆーの苦手
って言ってみたり
まあ、そういうとき、少しのヒントや、考え方の道しるべを出すのが私の仕事ですし、
実際にはどの科目も解説を考えたり、解説したりするのも大好きなので、質問されるのをワクワクしながら待っているのも事実ですが、その子が伸びるかどうかはその後にかかっていて、そこは、誰にも手出しができない領域、つまり、その子自身にしかどうにもできない領域なんです
教えていない子の方が学業成績が高めな理由は、
ただただ、自分の頭で考えて、工夫している、それだけの違いです
取り組むペースや、時間の使い方、楽しくて気が紛れてしまう中学生に対するさまざまな誘惑との付き合い方も含め、自分自身を律することができるからなんだと思います
最初に教えることはしないけれど、
質問されたら嬉々として解説しちゃう
それがDKの私です
小学生にはノーヒントで、
間違ってもついに答えが出なくても、
ウキウキしながら添削しちゃう
それがどんぐりの私です
それを毎日交互にやっているので、
私には、小学生以下の子どもたちがどう過ごしていたらいいのか、
よーく見えてしまいます
学業成績高めなのも副産物です
そんなの目的じゃないんです
ただただ、
考えるのが楽しいってことを、
深くじっくり考えるのが好きってことを、
出会った子どもたちみんなに伝えられたら
出会った保護者さんたちみんなにわかってもらって、一緒に実践してもらえたら
そう思って日々過ごしています
だから、
単語で会話しないでね
うふふ
「水」
って言われただけでお水をあげないでね
なんて伝えるか、こどもが、知ってる言葉を駆使するだけで、思考することになるのですから
ね、そんな訓練ならすぐにでも、始められるでしょう
無料で、誰でも、どこでも