0mx61 ズルスズメのずるそうな顔ったら…

普段忙しくてゆっくり話し合えないご夫婦が、
このお盆休みにもしのんびりと話し合える時間がとれるなら話してみてほしいことがあります

私のところに寄せられる悩み相談で多いのは、
「子育てや教育方針を夫に理解してもらえない」
「夫婦の考えが一致せず、子どもへの対応もブレている」
といった、夫婦間の方針の不一致に関するものです

どんぐり理論を実践するためには「環境設定」が大前提となっていて、
その中でも夫婦の間で最も多数の方々の議論の対象となっているのが、
●宿題制限
●メディア接触
の2つのようです

私のところに寄せられる相談の相談主さんは、99%の割合で女性、つまり「お母さん」で、ほんの少し、「お父さん」もいますが、相談主が「お父さん」である場合、「夫婦の方針が一致しない」という相談内容であることは少なく、また別の相談内容になってきます

「お母さん」たちが悩んでいるのは、子どもの勉強に関することで調べていてどんぐりを見つけた
または知り合いの紹介でどんぐりを知った
これはいい!と思って自らまずは糸山先生の著書などを入手して読み始め、どんぐりについて学び始めた
それで、子どもがこれまでしていたこと、させていたことと、それに対してご自身が抱いていた違和感の理由がわかり、すぐにでもどんぐりを実践しよう、と準備を始める
まずは環境設定
つけっぱなしだったテレビを消し、ゲームをとりあげ、子どもの前でスマホを使うのを控える
そして、学校の宿題に関して家庭学習を家庭の責任として任せてもらえるよう、学校の先生に連絡を取ろうとする
さあ、
ここで「お父さん」の登場です

テレビもゲームも誰でも持っていて、誰でも触れている、見ているものだ
みんながやっているのにうちの子だけやらせないわけにはいかないだろう
いじめられたらどうするんだ
かわいそうじゃないか
親のスマホだって誰だって子どもの前で使っている
何がいけないんだ
そして宿題をやらせないとか、学校や先生に命じられたものを完遂しないのは間違っている
そんなことを推奨するどんぐりってのはいったいなんなんだ、そんな変なもの、理解できない

旦那さんにそんな風に言われた、という相談は、正直、ここ20年で数え切れないほど受けています
200や300は超えていると思います
夫婦の形にはそれぞれあって、ひとりひとりの人間性も十人十色ですから、ひとことで解決する言葉など存在しません
双方の意見も聞かず、私が結論を出すことももちろんできません
お父さんにはお父さんの考えや言い分があることもわかります
でも、
時代はどんどん進んでいるのに、いつまでも進化しないそういう「お父さん」たちの言い分を「お母さん」経由で聞いてきて、また、私自身が味わった「そういうタイプの男性」からの言葉をいろいろ拾い上げて考えてみると、その男性方に共通するのは「自分の知っていることだけを認める」「自分の思い通りにしたい」という深層心理です
パワハラとかモラハラとかいう言葉がみんなに知られているこんなご時世、そんな言葉をあからさまに口にすることはないでしょうし、思いもよらないし、「自分はそんなことはない!」とお思いでしょうけれど、こればっかりは、男性が元々持っている特徴のひとつでもあるし、それが全て悪いとか、間違っているというわけでもなくて、ただただ「そういう特徴が際立っている人がまだまだ多いなあ」という印象は拭い去れないのです

「男性」で「年上」である場合など、ものすごく顕著です
私は今ではもう、50歳にも近づき、男性だの女性だの、って議論の仲間に入れてもらえないような年代にさしかかっているのかもしれませんが、これまで、自分より「年上」の「男性」から受けたたくさんの「屈辱的」な言動には、忘れられないものが多いです
その都度夫に話すのですが、男性である夫にはいまいちピンとこないようで、「考えすぎだよ」「そんなつもりはないんだよ」なんて軽く受け流されることがほとんどでした

場面を塾の仕事だけに限定して思い出してみても、
これまで数え切れないほどの女性蔑視経験をしてきました
男性は経験したことのない屈辱です
なにも、男性に勝とうとか、戦おうとか、思ってなんかないのに、勝手に最初から「目下」と決めつけて話を始められるのなんて日常的でした
未婚時代からそんな経験をたくさんしてきて、(それは塾業界が男性社会だからっていうのもあるんでしょうけれど)結婚したらどうなるんだろう?とその時は考えもしませんでした

私自身の夫婦間ではなかったのですが(その話はまたあとで書きます)
友人や知人の夫婦関係、また、仕事で出会う生徒さんのご両親の夫婦関係など、話は戻りますが、そこでまた、「男性って…お父さんって…」と考えさせられることが増えました

「自分の思い通りにしたい」という男性のなんと多いことか

「お母さん」が何を見聞きして、何に興味を持って、何を知ろうとして、自分たちの子どもについて真剣に考えようとしていて、何かを始めようとしていて…それなのに、それについて一緒に考えることもなく、ただただ闇雲に否定する「お父さん」のなんと多いことか

おまえの調べてきたことなんてろくなことはない、と一蹴されて泣いて電話してきたお母さんもいました
仕事もしてないくせに、と追い打ちをかけられたのです

目の前にいる妻の苦悩や、気づきや、父親である自分より明らかに多く長く子どもと接していて感じていることに共感するのではなく、世間一般の常識や、体裁を気にし、「みんなと違うのはおかしい」「自分の考えと違う」と決めつけてしまうのはなんででしょうか

そんな「お父さん」に悩む「お母さん」に私は、
時間をかけてでも伝え続けて、理解してもらえるまで頑張るしかないよね…って言うのですが、それでも、お父さんや、お父さんの親族みんなが「敵」みたいに孤立無援になっている「お母さん」は本当に多く、気の毒でなりません

逆に、「お受験」のために進学塾に入れて小さい頃から早期教育や受験勉強を頑張らせようとすると、そういう塾では必ず「夫婦の考え方の一致」を問われますし、なんなら夫婦で面談に行かなければならないこともあります
お母さんの努力を理解せず、協力もせず、関心を持たないのは育児放棄と同じですよ、と塾から叱られたお父さんもいます
でも、「お受験」や「進学塾」で頑張らせた結果、得られるのはお父さんも満足する「世間体的にOK」なわかりやすいものでしょうから、その方面への理解の方が、どんぐりみたいにいまいちわかりづらいものへの理解よりも容易かもしれません
どんなにお金がかかっても、それなりの結果を得るためなら、と頑張ってくれるお父さんも多いようです

どんぐりが理解してもらえないとしたらその効果がわかりづらいからなのでしょうか
偏差値の高い学校に入るためのスキルを身につけますよ、と謳っているわけでも、このお教室に通わせ、この高価な教材を購入し、定期的に報告したり実力テストを受けさせて確認しますよ、っていうようながっちりした組織やビジネスでやってるわけでもなく、お金もかからず、基本、家庭でのんびり進める、なんて、理解しがたいのでしょうか
そんなものやってどうなるっていうんだ?何が身につくんだ?そのためにテレビやゲームを控えて、スマホも子どもの前で使わないなんて、犠牲が多すぎるだろ、とでも言いたいでしょうか

どんぐりがこれまで積み重ねてきたものや、どんぐりで育った子どもたちのこと、いま、どんぐりを実践している日本中、世界中の仲間たちのことをたくさん知っている私は、正直、どこの家のお父さんよりも日本の教育業界のことも知っているし、(そら、30年この業界にいるのですから)子どもの発達、育ちについても我が子の経験しかない一般の方とは違うし、教育法マニアでもあるので、様々な教育法も知っています
教室で実践し、全国内外の家庭どんぐりさんをサポートし、自分のこどもたちもどんぐりで育ててきました
理論を勉強しただけでなく、実践を長く続けてきて、確信しているから堂々とこんなブログを書いているのです
どんぐりなら間違いないよ、って断言できるのです

どんぐりの効果や内容詳細については「お母さん」から聞いてもらうとして、そこまで耳を傾けてくれるような柔軟なお父さんなら問題ないかと思うのですが、やはり、ご自分でも気づいていない「自分の思い通りにしたい」という深層心理、深層願望は、夫婦間だけでなく、子どもに対してもかなり危険なものだということに気づいていただきたいのです

そして、「みんなと同じじゃないと」という考えも、とても危険なのです
まさか、自分はそんな風に思っていないさ、と反論したいお父さんも、よく考えてみてください
いざ、学校に「宿題を家庭の裁量で制限、もしくは免除願います」と夫婦で言いに言ってくださいね、と私がアドバイスしたとして、すんなり受け入れられますか?
学校からの命令には従わないと、
先生の決めたことは全部やらないと、
と、思いませんか?
実は学校の先生もお父さんと同じで、
こういう宿題を出すように、宿題はこう管理するように、上から命じられて実践している人がほとんどです
ご自身の社会生活でご存じかとは思いますが、
「上」に行けば行くほど、「現場」からは遠くなり、
「現場」で本当に困っていることや、必要な細かなことは「上」には伝わらず、
それにも関わらず、「上」からの命令には従わなければならない、というのが社会の仕組みですよね

今、子どもたちは子どものうちからそんな大人達の仕組みに振り回されているんです
宿題や定期テストをなくす、という改革をした公立学校の先生もいますが、それは世の中を動かしてはいません
先生を育てている大学ではそんなことを教えないし、子どもの学ぶ力や考える力がどう育つかなんて議論されず、国が決めた学習指導要領に則って学校運営を遂行することが各学校、各管理職の使命です

誰も、
現場の子どもたち1人1人に必要なことを考えてはくれません
だから、
漢字に興味があってお手紙や物語を書くのが好きで、日常的に書いていてとっくに小学校の漢字を覚えてしまっている子にもノートぎっしりの漢字練習の宿題を課し、
計算が苦手で1問解くのがやっと、という子にも、何も考えず、計算機のように作業のように計算をこなす子にも等しい量の計算の宿題を課し、
なんなら、私の生徒でアメリカ帰りの帰国子女の子がいたのですが、彼に、中学校はdogとかbookとかの英単語の宿題をやはり「平等に」課したのです

「上」からの命令ですから、仕方ありません
逆らったり、勝手に担任裁量で変更を認めたら担任の評価が下がるでしょう
だから、どんぐりの親たちが宿題交渉に行くと「校長先生と相談します」とかなりの確率で言われるのです
校長室に呼び出された保護者もいます
「支店長に相談してからでないと…」「課長を呼んできます」と、同じですよね

宿題の内容やその管理の方法は「お父さん」が育った時代のそれとはまったく違っていること
「お父さん」が育った時代のように、子どもが放っておいてもわりと強く賢く育つような環境は今はなく、お風呂のお湯をためるお手伝いを頼まれ、遊びに夢中になって溢れさせてしまうような失敗も今の子はできません(自動で止まりますから)
駄菓子屋で小遣いを切り詰める経験もなく、「おつり」を知らない子も出現しています(電子マネーで親が払いますから)
ゾンビや戦争や殺し合いのゲームが人気で、30年前、「リセットボタンを押せば人は生き返ると思っている」という子が20%くらいいる、とかいうアンケート結果に驚いたのも懐かしいですが、今はさらにどうなっているかわかりません
取っ組み合いの喧嘩の経験などないので、殺傷能力のあるもので急所を狙います
年下の子への手加減や思いやりも経験がないのでわかりません
赤ん坊が絵本のページを指でささっ、ささっと動かそうとする現象も実話笑い話で出てきます
タブレット学習でやはり子どもたちは紙の教科書の絵を指で動かそうとします
タブレットでは図形がくるくる回ってくれますから
でも、
試験は昔から変わっていません
今のところ、筆記試験が主です
読めない子、書けない子、話せない子は加速度をつけて増えています
親が子どもの前で誰かと電話で話すことも少ないし、井戸端会議も減ったので、自然と耳に入っていた敬語も知らず、語彙力も低下しています
連絡網も、井戸端会議も、スマホの中で行われていますから

このままで、人間的にどうなるのよ?と疑問を持たざるを得ない現代の子どもを取り巻く環境への不安は増えるばかりです
そんなこともご存じの上で、それでも、「上からの命令」で時代遅れの反復・パターン・スピード学習で考えなくてもできる作業宿題を、やっぱりやった方がいい、と思いますか?そんな宿題で大切なエネルギーを浪費している子どもたちに対し、その宿題の意義を説明できますか?(我慢を練習すれば社会に出て我慢できる人間に育つ、と勘違いしてる人が多いですが、それは間違った情報なんですよ)
日常生活で当たり前に育っていた生きる力を、他で補わなきゃならない現状を、どうにかしなくちゃなあ、って思いませんか?

最後に私たち夫婦の話を書きます
これは、私たちだけじゃなく、他何組かの夫婦に共通していることでした
いろいろな、気になる夫婦に話を聞いてみたのです

キーワードは「相手への敬意」です

私の夫はどんぐり理論に詳しくありません
ただ、私が糸山先生を尊敬し、どんぐりを勉強し続けていることを知っていて、
子どもをその理論を信じて育ててみることについてただただ共感してくれていました
どんぐり理論が、「何かをさせる」のではなく、「させない」理念だったのもよかったんだと思います
ただ、お互いに育った環境も違うし、それぞれの両親の教育方針も異なり、全てが一致している、というわけではまったくありません
価値観も違うし、あらゆる場面で「えっ!?」とお互いがびっくりするようなこともありました
でも、とにかくいちいちよく話し合ってきました
へえ、そういう経験をしているんだね
そういう考えがあるんだね
お互いに、そんな風に相手の言い分を聞きました
もちろん、きれい事ばかりではありません
がっつり衝突をしたこともあります
でも、子育てに関してはあまりなかったかな
私の場合、どんぐりに出会う前10年間の塾講師歴があり、職業として教育に携わってきたのもあって、夫が私の教育に関する言い分を信じてくれるのも、その背景はあるんだと思います
でも、一番大事にしているのは、「相手への敬意」だと夫は常に言っています
縁あって夫婦になった、その相手が好きなものや好きなことを否定することは相手への敬意がないこと、と

私は元々、人に頼るのが苦手でした
自分では何にもできないくせに、できるふりをして強がったり知ったかぶったりする欠陥人間でした
でも、夫にはなぜか、自分の欠点や、できないこと、わからないことを無理なく打ち明けられるし、できない、助けて、って簡単に言えてしまいます
私の専門分野を夫が信頼してくれているように私も彼の専門分野は彼に任せています

子どもたちがそんな私たち両親をどう見て育ってきたかわかりませんが、子どもたちがどう感じるかを私たちはコントロールできません
子どもたちは自分の見聞きしたものを自分の心身に落とし込んで、新しい世界を、新しい人間関係を築いていくはずです

妻である私のことも、子どもたちのことも、本能的に「自分の思い通りにしたい」と深層で思っているのかもしれませんが、そう感じることはありません
でも、身近にいる「自分の思い通りにしたい」男性たちのことを、よく話題にしてなんとかその心理を理解しようとふたりで努力はしてみたりします
それでもやっぱり理解できないし、実際、あからさまにそういう「お父さん」の家庭をたくさん見てきて、正直、幸せそうだな~と見えることはあまりありません
もちろん、他人から幸せそうに見えなくても、ご家族みなさん幸せならそれでいいのでしょうけれど、私の場合、子どもさんを預かったり子どもさんの様子を見たりする仕事をしているので、お父さんのそんな深層願望や、それに抗ってどんぐりを孤独に進めなくちゃならないお母さんの苦悩を、両親が知らないうちに子どもが背負ってしまっているのに気づくと、私自身がその子に同調してしまい、どうにもならない苦しい気持ちになってしまうことがあります

ドラゴン桜でも、「夫婦が一致していないと合格しない」と(漫画ですから極論ですが)
いうようなこんな10ヶ条がありました
8と10です
漫画だし、(漫画ですが、ものすごい取材量だそうです)
東大受験の話だし、
関係ないや、ではないんです
これが象徴的なんだと感じます
そんなのどうでもいいから勉強すればいい!っていうのかと思ったら、この10ヶ条が出てきたので、初めて出てきた時はびっくりしました

「子どもを伸ばしたいなら」という仮定です

「別にいいさ、なるようになるだろ」と思うのも自由です
東大はともかく、どんぐりで学校の宿題を制限したりメディア制限したりしてまで思考力を育てなくたって放っておけば(自分と同じように)賢く育つだろ、って思っているお父さんも多いです
みんなと同じようにやっていって、その時なるようになるだろ、って

なるようにならないからお母さんは危惧しているんです
子どもを取り巻く環境を、子どもを育てながら垣間見て、不安に思っているんです
配偶者が不安に思って、救いを求めているとしてもまだ、
「なるようになるだろ」「考えすぎだよ」「そんな変な理論おかしいよ」って一蹴しますか?

お母さんでは説明がわかりづらかったら、いつでも私に連絡してください
女性の私に質問するのはプライドが許しませんか?
そんなこと何度も言われているので慣れています
進学塾の教室長だったときも、「責任者は?」と聞かれるのは日常でした
学校に面談に行くのも、
家の補修の業者さんと話すのも、
私1人の時と、夫と一緒に行くときとで相手の態度が180度変わるのにも慣れています
どう見てもか弱き乙女なルックスでもないのに変だなあ
(私の現在の姿を知っているそこのあなた!吹き出さない!!)
この差別は永遠になくならないんだとは思います
でもまさか、
ご自身がそんなことを配偶者相手にしているとは、思いもよりませんね?
まさか、根っこの根っこからその思想から抜け出せないでしょうか

そんなことはないはず
一度、夫婦でしっかりと、お互いへの敬意を持って話し合ってみてください
もうそれだけで、どんぐりをするとかしないとか、宿題するとかしないとか、そんなことよりずっと大切な、お子さんにとって欠かせない、家庭内の空気が一変するに違いありません

どうかよろしくお願いします、お父さん