我が家で、長年契約していたある業者さんに、
しばしのお別れを告げました

我が家には分不相応な業者さんでしたが、
いろいろな理由で、他の経費を削ってでも、と、何よりも優先してきたことでした
そして、今回、またいろいろな理由で、しばらくお休みしなければならないことを事前に連絡し、そして、当日の担当者さんに最後の挨拶をしたのでした

「やめる」理由はこちらの事情のみであって、業者さんに全く非はありません
しかも、私は必ず復活させることを目標に「休止」したのであって、「退会」はしませんでした
見通しは立っていません
でも、夫も「いつか必ず復帰しよう」と言ってくれました

手順は踏んで、こちらなりには準備をして、最低限の礼を尽くしたつもりでしたが、
いざ、お別れの段になると担当者の方が少しがっかりしたように見えて(見えただけで、実際にはわかりませんが)申し訳なく、そして、悲しくなって、それで、とぼとぼとこの書斎に入り、しばらくボーッとした後、感情的になってこれを書いています
必ずアップするつもりで感情的に書きます

どんぐり学舎も、DKRも、世間的にはただの「習い事」「塾」の一種で、
この季節になると「やめる」生徒さんがいます
子どもの習い事なので、子どもの意思かと思いきや、ほとんどが親御さんの意志、または、親御さんの誘導によるものです
それぞれの家庭に事情がありますから、「やめる」決断を引き留めるようなこともしません
でも、私と似たような「習い事」系の仕事をする友人から昔聞いた話を、この季節になると、時々思い出します

小学生から中学生になるとき、芸術系、お稽古事系の習い事は淘汰される傾向にあります
全身全霊で子どもたちを指導していた私の友人ですが、3月は病気になりそうなほど辛い、といつも言っていました

「中学生になるので、やめます」
「退塾します」
ラインやメールで急に言われるケース

そして、長年一緒にやってきた子ども本人不在のまま、親御さんが突然やってきて
「今までお世話になりました~」とお菓子を置いて去っていくケース

友人は、「後足で砂をかけられるとはこのことだ」と泣いていました
私も一緒に泣きました

小さい頃から
ちゃんと座っていられないくらい幼い頃から
一緒にたくさんの時間を過ごした生徒さん

できなかったことができるようになって、
スランプを一緒に脱したりして、
軌道にのって笑顔が増えてきたこと

お母さんやお父さんには言えない話を、こっそりしてくれたこと

わたしたちは毎週同じ曜日、同じ時間にただ待っているだけなんだけど、
学校から帰って、教室に来て、あのねえ、あのねえ、ってとりとめもなくいろんな話をしてくれたこと

わたしたちは、
小さな規模だからこそ、ひとりひとりに全力で向き合っています
大きな組織の大きなシステムでは、
「退会」とか「休止」とかいうボタンを押せば簡単に自分の存在を削除できますが、
私たちのような小さな教室では、
名簿から名前を消しても、教室にある私物を片付けても、
ずっと寄り添ってきた私たち自身の心の中にある彼らの居場所は、
そう簡単には削除されません

「やめる」「退塾する」という言葉が、
どれだけ私たちのような教室の者を苦しめているか、
また、大きな組織であっても、
たとえば、どんぐりを始めるにあたって習い事を整理する時であっても、
それはきっと、同じことです

なにか、こちらに非があるとしたら、
どうぞ、積年の恨み、後足で砂をかけて思い切り目眩ましして去ってください
ひゃあ~なんじゃこれ~と私たちが目をぱちぱちやっている間に、
去ってください
そうしたら、何が悪かったんだろう…といつまでも反省できます

でも、これまで、なかなかいい日々を過ごせていたんじゃないかな、って思ってくださっているならば、
そんな去り方はしないでください

どんぐりは特に、
特殊な方法論なので、どうしても生活環境を変えられないとか、そんなに長期戦では待てないとか、いろいろ、方針転換する理由があると思います
そもそも、どんぐりを始める方って、どんぐり理論についてまずは親御さんが勉強してくださるから、そういう場合はあまり途中で方針転換、ということがないように思うのですが、それでも、始めてみたらなんか違った、ということだって、ないこともありません
そういう場合は、そう話してくださればいいと思います

以前、私の教室を「やめて」また「はいって」また「やめて」を繰り返した生徒さんとその親御さんがいました
生徒さんは私との約束をほとんど守ることができず、親御さんもどんぐりやDKの方針をあまり理解してくださっていませんでした
何度も断って、それでも、ということで結果、入退を繰り返す形になってしまいました
そのことで、自分の甘さが情けなくなり、師匠(糸山先生)に泣きついて相談したことがありました
糸山先生は、「この教室はこういうところです。以上。」と、アドバイスをくださいました
つまり、
教室を利用するのは、教室の方針に合っている場合だけであって、合わない人は来ないということ
合わないのは個人の問題であって、教室が方針を個人に合わせる必要はないということ
そのアドバイスで、私は自分がいかに「誰にでも好かれよう」としていたのかを知りました
でもそれは、
わたしがこの仕事を始めたときに働いていた進学塾の考え方が、なかなか払拭できずにいたからかもしれません
進学塾では、ひとり退塾者を出せば反省文のようなものを提出しなければなりませんし、下手をすれば減俸につながるようなところもあります
営業さんは地域にローラー作戦を実行したり、看板やポスター、折り込み広告で必死に生徒を集めます
私も早朝から小中学校の門の前でビラ配りをしたことが何度もあります
ちょっとでも興味を持ってくださるような態度のお子さんや親御さんがいれば、他塾に通っていても、割引や、特典などの条件を出して引きずり込む勢いです
「うちはこういう教室です。この方針に合わない方は来なくていいです」なんてことは言っていられないのです
その結果、やっぱり合わない、とやめていく生徒さんの数も多いです
そうすれば反省文を書くのは教室長です(苦笑)
ちなみに私は、自分が教室長になってからは、入塾前に1時間も2時間も面談をし、じっくり考えてもらってから入塾してもらうようにしていました
私はまだ独身で、家計のことなどよくわかりませんでしたが、進学塾に入るためにかかる費用は莫大に感じましたし、月々の支払いや講習会の料金など、年間費用を考えるとかなりの覚悟が要るのではないか、と想像できたからです
だからなのか、私の教室では途中退塾者はほとんどいませんでした
まあ、私が任されていたのは、ほんの短い年数でしたが

そんな経験が邪魔をして、どうしても払拭できなかった部分があったのですが、少しずつ、なくなってきたかなあ、と思っていた矢先でした

どんぐり学舎を「卒業」する生徒の1人が、
「おれはやめるんだ~!おまえはやめないの?やめるの?他の塾いく?」って他の生徒に言っていました
子どもの言うことですから、それは放っておいたのですが、それでも、その子と過ごした日々を、ふっと思い出していました
わたし、なんかしたかなあ…
そんな言い方あるかなあ…
ほんとは嫌だったのかなあ…
親御さんと、どんな話をしているのかなあ…

どんぐりが「合わない」から、と方針転換する方でよく聞くのが、
「どんぐり倶楽部、ダメダメ」って発信するケースです
どう思いますか?と私のところに相談が来ることもあります

そうですか、私は、最近、こう思うようにしています、と返事をするんです
あるところに、美味しいと評判のラーメン屋さんがあります
店主は全身全霊でラーメンの研究をして、自信を持って独自のラーメンを開発してお客さんに提供しています
でも、あるお客さんの口には合わなかったようで、「美味しくない」とそのお客さんは思いました
さて、みなさんならどうしますか?
厨房に入っていって、「あなたのラーメンは美味しくありませんよ」と店主に告げますか?
「あの店は美味しくないよ」と周囲に言いふらしますか?
そして、お客さんにそう言われた店主は、その後どうすべきだと思いますか?
その人のために、ラーメンの方向性を変えていくべきだと思いますか?

どの教室も、一生懸命やっています
もしかしたら、お金儲けだけが目的の、子どもを人質に、親御さんからできるだけ巻き上げようとするような悪質な教室も…どこかにあるかもしれません
でも、私の知る限り、どんな教室も、それぞれ、方針をもってやっています
大きな進学塾だって、小さな塾だって、芸術系の習い事だって、スポーツ教室だって、お稽古事だって、
どんぐり学舎みたいな吹けば飛ぶような教室だって

人と人とが関わることの全てに、
心が介在する、と私は思っています

工事現場の誘導の人に深々と頭を下げたり、
しつこい勧誘電話の方に丁重に謝罪したりするのを見て、夫には呆れられますが、
それでも、もしかして、その人が自分の大切な家族だったら、友人だったら、って思うと、
雑にあしらうことはできないのです
相手は、人間なのですから


「しばらくお休みしなくてはならなくて…」と担当者さんに告げたとき、
えっ!!という表情を少しだけされた気がしました
私はそことの取引が大好きで、何にも悪いことなんかなくて、長年本当にお世話になっていて、やめたくなくて、でも、仕方がなくて
「でも!退会していないんです、だから、必ず戻ります」と慌てて言うと、
よかった…という笑顔を見せてくれて、「お待ちしています!」と言ってくださいました

やめます、って言わなきゃならないとき、
ちょっと考えてみてください
開催する側の気持ちを、少しだけ、想像してみてくださいね