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売虎君が使っている時計は、3分で長い針が1周するウルトラ時計です。売虎君のお昼ご飯はいつもウルトラ饅頭です。
売虎君はいつも長い針が30度進むごとにウルトラ饅頭を2個ずつ食べます。
今日はお昼ご飯に2分15秒をかけて饅頭を食べました。
今日の売虎くんのお昼ご飯は何個のウルトラ饅頭だったでしょう。

正義の味方!?の売虎君が赤いマントでまず描かれています
マスク・オブ・ゾロみたい…
そして、「3分で長い針が1周する時計」の絵図が最初のページの右上に描いてあります
1分、2分、3分、とエリア別に囲んであって、一目瞭然の絵図です
1周は180秒だな、とメモしてあります
ウルトラ饅頭(あやしい~w)が2つ、大きく描いてありますが、時計の中にも、30度動く間に2個食べる、というのがわかるように示されています
2分は120秒なので、2分15秒は135秒のようです
ここからです
この時計では1分間=60秒間で120度長い針が進むから、
60秒は15秒×4回分で、まず、120度も4分割
そうすると、30度になり、この30度動く間に饅頭は2個
それで、135秒(2分15秒)は15秒の9回分なので、30度で2個、ってのも9倍する、つまり、2個ずつ食べるお饅頭の個数も9倍する、だから、全部で18個食べることができる、と算出しています
30度を9倍するところでは、30度で食べられるお饅頭をちゃんと2個描いて、それを9セット描いて数えています
饅頭を黄色で描いて、合計の個数も黄色で描いているので、何を数えたのか自分でもよくわかっているでしょう
単位をつけたまま考えているのも特徴的です

お見事でした

ところどころ、筆算をしていますが、絵図でしっかりと、何を求めているのか、求めた結果はどの部分なのかを理解しながら描いて考えているのがよく伝わってきます

数年前、
教室に来ると目を腫らしていることがありました
始めたばかりの時は、問題も番号順にしっかりと選び(そんな風に選ばなくても構わないのにです)、一生懸命正解しようと努力していましたが、
なかなか正解が出ず、お宝ばかりでした
お宝だっていいのに、やっぱり、正解したい、という気持ちは誰にだってあります
「全然、できない」と毎回、落ち込んでいたようでした
出会った当初はとても大人しくて、控えめで、いつもお母さんの陰に隠れているような子でしたし、塾生になってからも、なかなか打ち解けず、本心がわからないことがありました
それでも、私が知っていたのは、この子がとても素直で純粋だということ
それから、お母さんの陰に隠れているような繊細で控えめなところは、実は、感受性が強く、いろいろなことを実はとてもよく見ている子だということ
(私の長女もこのタイプ)
だから、何にも心配していませんでした

ただ、毎回悲しげな顔で目を腫らして来ることは、私にとっても切ないことでした
幸い、お母さんは子どもに聞こえないところで(それがうちのルール)実は…と事情を話してくれていました
解けない、と泣きながら来る、と
それでも、来る、と

もしかしたらそんなに悲しむその子を見て、お母さんだって苦しかったでしょうから、「それなら、もうやめようか」って誘導したら、「うん、やめる」と言っていたかもしれません
お母さんがそのような誘導をしてもこの子がやめなかったのか、
お母さんが決してそのような誘導をせずにいたのか、
私にはわからないのですが、とにかく、結果的に今ではその状態とはかけ離れたこの作品を描くような成長を遂げたその子を見るにつけ、「親子で乗り越えたんだ」と確信するしかありません

たぶん、当時は当時で、私もなんらかの助言はお母さんにしていたと思います
私からしたら、100問解いて100問お宝行き、なんて子も見てきたし、それがなんだ?ってところもあるので、「えー、全然気にしなくていいのに。解いているだけでいいのに。」って伝えていたと思います
お母さんも私のその言葉を理解はしてくれてたと思います

そして、この子に対しては、もちろん、やっぱり、どの子にもするように、途中まで描いた作品や、最後まで描いて考えたけど答えが出ていない作品を見ても、嬉しそうに、ニヤニヤしながら、へえ、ほお、とひとり言を言いながら、添削を続けていたわけです

「ここまで描けたらたいしたもんだなあ」なんてつぶやいたり、この子がちょっとした遊び心で描く小さなイラストに気づき、「なんだ!?ここになんかいるぞ!」と大笑いしたり

そんな私の反応を楽しむかのように、答えがどうのこうの、っていうより、とにかく問題文から想像できることを片っ端から絵にしてみよう、っていうような雰囲気になってきてから、この子はどんどん進化していきました

キャラクターも自分なりに想像して毎回楽しい絵を描いてきました
状況を説明するために、マンガのような吹き出しで台詞を言わせたりしている絵も多かったです
そのうち、数えるための印をつけたり、整然と並べて数えやすくしたりする工夫が見られるようになりました

そして、この売虎君問題です

今では、お母さんの陰に隠れて大人しかった当時の印象からは全く違った子になっています
私にも仲間たちにも積極的に話しかけ、提案し、よく笑う元気な子です
そして、とても、とても優しいのです
いつも周囲を気遣って、思い遣って、笑顔を向けているような子です
そして、作品を見ると、毎回、頼もしく…
時々お宝になっても、くよくよしている様子もありません
いつも情緒は安定しているように見えます
泣きはらしてやってくることも、もう、随分前からありません

「親子で乗り越えたんだ」

やっぱりそう確信しています

親は、子どものことが大切で、可愛くて、何があっても守りたいものです
だから、子どもが苦しんでいたら助けてあげたくなるのも当然です
でも、時々、その親心が徒となり、子ども自身が飛躍するタイミングやチャンスを逃してしまっていることがあります
すごく簡単な例だと、
大人はただ単に、経験がありますから、
「そんなことをしても無駄だ」と知っていることや、
「それよりこっちの方が簡単だ」と知っていること、
「今そんなことをしたら後が大変だ」と知っていることもあります
それを、経験のない子どもに逐一教えていたら、どうなるでしょうか
子どもは、親に従い、言う通りにするので、事なきを得るかもしれません
でも、経験値は積めません
失敗をしないかわりに、経験値も得られないのです

子どもは小さな大人ではありません
大人だって昔は無知な子どもで、失敗もたくさんしてきたはずです
尤も、最近ではもう、親御さんの育った時代が、教育熱心なそのまた親御さんや環境のせいで、
親御さん自身が子どもらしく失敗しながら困りながら成長する過程を踏んでいないこともあるように思うこともありますが…

そういう意味で、親子で乗り越えるチャンスが巡ってくるのです
親が、子どもと暮らしながら、ひとつひとつ、学んでいくのです
私だって同じです
子どもを授かるまでの10年の塾講師人生、
子どもを授かってからの18年の塾講師人生、
いつまでたってもゴールには辿り着かず、考えなければならないこと、勉強し続けたいことは山盛りですが、それでも、これまでの経験を振り返ると、全て、自分の間違いを子どもに正してもらってきた、と言っていいくらい、我が子や生徒たちに教わり続ける日々でした

もし私が、自分の経験値で我が子や生徒たちの人生をコントロールしようとしていたら…
考えるだけで恐ろしいです
誰だって、人生は一度しか、一種類しか経験できません
いくら波瀾万丈で何人分生きてきたの?ってほど苦労なさった方だとしても、
それでもやっぱり、地球上の全ての人の人生を導けるような人はどこにもいません
親が、子どもを誘導することには、ものすごい危険があるし、かなりの覚悟がいるのです
できればそんなことやめておいた方がいい
子どもが、自分の人生を自分の力で歩むことを望むなら、子どもの苦悩の時期も一緒に乗り越えてみてほしい
簡単に諦めたり逃げたりせずに

もちろん、諦めること、逃げることも時には必要
命をかけるほどのことではないのですが、その話はまた別のときに

「あの頃は泣いていたっけ」というテーマで寄稿をお願いした際の、別の保護者さんの文章を最後にご紹介します
もし、私のブログでよければ、みなさんのどんぐり経験を寄稿いただければこのようにご紹介したいです

同じように子育てに奮闘し、教育について考え、どんぐりを実践している方が、他の同様の実践者を勇気づけるような…そんな寄稿をいただけたら私もとても心強いです


どんぐりを始めたばかりの頃、どんぐり問題に私も興味があり一緒にやったり教えてしまったり…してました。
一度教えると、次も聞いてくる。そして出来ないから怒る、泣く、と繰り返す。
そこから脱するには、何度も繰り返しながら、子供と向き合い自分を見つめ直す事でした。

そもそも私自身も、聞かれる事に怒っている。
出来ない娘に怒っている。
泣いて取り組まない娘に怒っている。

そうです。私が怒っていたんです。
娘は、出来ない事がいけない事だと思っていたのかもしれません。
それは、今もまだ娘の中にありそうですが、出来なくてもいい。と認識するまでにはまだ少し時間がかかりそうです。

今まで、出来る事がいい事と教えて来たのは紛れもなく親である私です。急に出来なくてもいいと切り替えるには無理があるので、毎日こつこつ出来なくてもいいよ。の繰り返しです。それは、どんぐりだけではなく学校の勉強もです。今もまだその繰り返しの中にいます。

そして、さとちゃんにも娘との関係を相談し、娘と向き合い、謝り、自分自身を変えようと努力をしています。
凝り固まった私よりも、娘はとても柔軟で素直で優しいです。
さとちゃんが、子供は優しく逞しいといいますが、本当にそうだと心から感じているこの頃です。

子供の事をゆっくり待つ。口を出さない、どんぐり問題をやっている時は別の所へいく。か、干渉しない。
とにかく、出来なくていいからゆっくり考えて描いてみる事を教える。
今は、全く聞いてこなくなった娘たちです。なので、こっそりノートを見るのですが、それがとっても可愛くて、こっそり見る事が楽しみになっている私です。