実際にどんぐり問題を自分で解いてみるとすっかりわかるのですが、
解いてみる前は「ふざけた問題だな」「こんなのやってどんな効果があるんだ」と疑う大人は多いです
特にお父さんたち!
これ、「お父さん」が作ったんですよ
糸山泰造先生はお父さんで、ご自身のお子さんとどんぐりタイムをもちろんご自分で実践なさっていました
たぶん、
子ども目線に戻るのがお父さんは苦手で、現実主義の方が多く、どんぐり問題でなくても、子どもが語る非現実的な世界に心から寄り添って一緒に楽しめる方が少ないような気がしています
急に現実的な冷めたようなことを言い出すお父さん、多いです
もちろん、お母さんの中にもそういうのが苦手な方もいます
何事もバランスが大事で、家族の中の誰かが寄り添って、誰かが現実主義でもまあ構わないのですが、あまりにも子どもを小さい頃から現実主義に巻き込んでしまうと、脳の成長も早めに止まってしまうようなので、要注意です
要するに、伸びしろがなくなってしまうのです
どんぐり学舎の子どもたちがここ数ヶ月で解いた作品の中からランダムに0mxだけ掲載しました
問題文も映っているので、一枚、一枚、子どもたちがどんな絵を描いて解いているのかがわかると思います
どんぐり問題のルールは問題を1度だけ読んで、読みながら絵にしていって、描いた絵を見て最後の質問に答える、消しゴムは使わず、勘違いも回り道も間違いも含め、自分の思考過程を全て記録していく、ということだけです
大人はヒントをあげません
解き方ももちろん教えません
大人が、子どもがどんぐり問題を解いたあとにすべきことは、
今の時点で、子どもはどんなことを視覚イメージ化できて、どんな風に考えることができているのか、というチェックです
子どもが「描けない」「解けない」「正しい答えを出せない」ということを、子どものせいにする大人は多いようですが、それはとんだ筋違いです
描けない、解けない、考えられない状態に「育っている」からそういうことになるのであり、それは、子ども自身が生まれた時からたったひとりで生きてきたのならともかく、当然ながら身近な大人に育てられて成長してきただけなのに、それを子ども自身に責任転嫁するのは筋が違いますよね
そのことに、大人が気づくべき、ということ
どんぐり問題を解く子どもの姿、描いた作品を通して、子どもの「いま」を見る、ということがこの問題の最大の仕掛けです

大げさなようで、非現実的なようで、でも、検索すると「ネットお悩み相談」なんかでよくある「あるあるエピソード」
子どもがゲームばかりで宿題をしません、寝る時間もゲームばかりで遅くなり、朝までやっていて起きてきません、どうしたらよいでしょうか
なんてのは、じゃあ、いったい誰が、そんな中毒性のある機械を買い与えたのでしょうか?とまず問いたくなるわけです
20年ほど前の生徒ですが、中学1年生、私のところに親御さんが連れてきて「家で全く勉強せず、宿題も提出していないようで学校の先生からも注意されてばかりです。どうしたら家で勉強するようになるでしょうか」と最初の面談で相談されました
初対面では何もわかりませんでしたが、その子の視線の動かし方からなんとなく予想がついて、部屋の間取りを描いてもらうと、見事にその子の自室(個室)に、テレビと、ビデオデッキ、スピーカー、ゲーム機が設置してありました
まるで大学生の居室のように居心地の良さそうな、楽しげな部屋でしたが、中学生が自分に厳しく「よし、テレビを消して勉強するぞ」なんて気分にはならなそうな部屋でした
(時代的に、スマホはなかったのですが、今ならスマホ一つで、テレビやビデオデッキ、ゲーム機の役割を全て担うことができます)
そのことをまず指摘すると「ほら、やっぱり。ちゃんとテレビを消して勉強しないと!」と親御さんは私の目の前でお子さんを叱りました
いやいやいや、お父さん(面談に来たのはお父さんでした)
こんな楽しげな部屋じゃ誰も勉強に集中できません、って
まず、中学生の自室にこれだけのAV機器が完備されていること自体、結構レアで、かなり困難な状況ですよ、と私は伝えました
「よし、じゃあ帰ったらすぐに撤去だ!!わかったか!!」
お父さんはまた子どもの方を向いて厳しく言い放ちました
いやいやいや、その前に、お父さん、誰がいったいこれだけの機材を設置しましたか?いつからあるんですか?
聞けば小学校1年生で自室を作ってあげて、テレビ等は最初から設置してある、とのこと
子どもの好きなものを好きなように見せるため、自由にしておきたかった、とお父さんは言いました
「でも、これからはダメだ!」と張り切ってまた子どもの方を向くお父さんに、私は言いました
「お子さんが自分でお小遣いで買ってきて設置したのならともかく、お父さんが買い与え、お父さんが設置したのに今度は急に取り上げるんですか?それはかなり理不尽なことだと思いませんか?」
それからそのお父さんとはことあるごとにいろいろな話をしました
まずはご自身が反省され、機材を撤去する前に子どもによく話して聞かせ、子どもに謝罪もしてくれました
永遠に撤去するのではなく、自分で制御できるようになったらまたいつでも戻せるように、大切に保管しておくことも約束しました
面談には必ずお父さんが来てくれて、何でも質問してくれて、何でも相談してくれたので、その子のことは手に取るようにわかりました
でも、
余談ですが、その子が「勉強ができるようになる」ことはありませんでした
小学校1年生から(その前ももちろん、自室ではなくとも)テレビや動画漬けの日々だったのです
次から次へ切り替わる画面を、刺激を楽しむかのように見入っていたことでしょう
思い起こせば園児時代から視線が定まらない、と指摘を受けたけど気づかなかった、と後にお母さんも言っていました
集中して読むことも、集中して考えることも、覚えることも、全て、苦手でした
何しろ、音も出なければ絵も動かない教科書や問題集から、自分の力で書いてあることを読み取ることなど不可能でした
学校の先生には授業中の集中力のなさからいつも叱られていて、校医の先生からは脳の障がいを疑われました
深く考えることもできず、自分の身の回りのことも気にしなさすぎて、友達を作るのにも苦労していましたし、悪い仲間によく考えずついていって問題行動を起こしたことも何度かありました
私を含め本人を知っている者は、彼が悪いことをしたくて仲間に入ったのではないことは明確でした
それ以前に彼には善悪の判断がつかなかったのです
それくらい、彼の状態は深刻でした
知らず知らずにいじめに加担していたこともありました
よく考えないし、考えられないから、やれと言われたことはしてしまうのです
私の経験では、彼が本当に脳になんらかの障がいを抱えていたのか、それとも、幼少期からの異常な量のメディア接触のせいなのか、判明させることはできませんでした
話が飛躍しましたが、
みなさんはここまで極端な例を聞けば、それは子ども自身の責任ではなさそうだ、と気づかれるはずです
ここまで極端ではないにしても、
大人がこしらえる環境が、子どもに影響していることは明らかだということはおわかりいただけるかと思います

子どもの前でスマホばかり見ている大人
子どもの前で汚い言葉で会話する大人
子どもの前で新聞や本を読まない大人
自分の身の回りのことも自分でしない大人
誰かに横柄な態度をとる大人
常識的な挨拶もしない大人
家族を尊重しない大人
パートナーを大切にしない大人

そんな大人を、子どもは見て育ちます
それなのに、
中高生になって、学業成績が数値に表れたり、生意気になったり、と成長する我が子に、急に「勉強しろ」「何だおまえは!」「ちゃんとしろ!」なんて、無理に決まっています

だって、お手本を見て育ったのだから

親は模範的な人間であれ、と言いたいのではありません
子どもの前で嘘で固めたような模範的な親を演じることこそ危険です
子どもの状態や態度におかしな点を見つけたら、
それはもしかして自分を真似ているのかも、といったん立ち止まって省みてくださいな、と言いたいのです
そんなに高望みしなさんな、と
そして、子どもは自分とは別人格で、その育ちを邪魔さえしなければ、子どもそのものを心から愛して大切に育てれば、子ども自らが自分の幸せな人生をちゃんと切り拓いて生きていけるんですよ、と
言いたいのです

どんぐりは、ごく自然な子どもの成長に沿っていく問題集です
この問題を通して子どもたちの見ている世界を見せてもらえることは、とっても楽しくて、幸せです
ああ、この子はゆっくりと、しっかりと、自分の歩みを止めていない
ちゃんと前を向いている…と確認できる問題です
子どもに、
早く、急いで、前もって、いろんなことを教えておかねば、先取りさせねば、と、次から次へとやらせようとすればするほど、子どもは本来の育ちを忘れていきます
本当ならゆっくりと獲得すべきことを、駆け足で獲得させられると、本当に獲得したことにならず、途中で取りこぼします
だから、小学校高学年の算数で急にわからなくなったり、中学校の英語が極端に苦手になったりするのです
そうなったらそうなったで、その時、その時の対症療法を探すことになるのでしょう

でも、そんなフォローをいつまで親がしてあげるのでしょうか
そもそもは親が蒔いた種なのに

親御さんを責めると、傷つき、ショックを受け、悲しませることになるのかもしれません
でも、
私には子どもを責めることは絶対にできません
子どもが悪いなんて思ったことは一度もありません
親には親の事情があり、一筋縄ではいかない原因が見つかることは多々あります
でも、子どもにとって、親に責められることほどつらいことはないということを、やっぱり忘れないでほしい
子どもは、どんなときでも、親に認められたい、愛されたい、今の君が大好きだよ、って言われていたい
そんなけなげな子どもの気持ちを、わかってください

0mxは、どんぐりを始めるお子さんは必ず通ってほしい問題集です
高学年スタートでもぜひ0mxは経験してほしいです
年長からコツコツとどんぐりを当たり前のように実践することができれば理想的ですが、私は最近、たとえ6年生でも、どんぐり問題を1問でも経験しておくと中学生になって違うんじゃないかな、と思うこともあります
どんぐりの世界を何にも知らないのと、少しかじっているのとでは、全く違うんじゃないかな、って思うんです
ちなみに私が小学生の頃は糸山先生は大学生ですからまだ世の中にどんぐり問題はでまわっていなかったのですが、私自身、学校の授業を受けたり、教科書を読んだりして納得がいかないことは絵を描いて自分なりの解説書を作って自分で自分を納得させていました
誰に教わったのでもなく、自分で考えた方法です
それは今思えばどんぐり理論だったのかもしれません
だから、今も、どんぐりとは無関係でも、この理論を自ら実践している小学生はどこかにいるかもしれません
でも、全くどんぐりワールドを知らず、想像もできないお子さんにはぜひ、どんぐり問題を経験してみてほしい、と思っています
高学年スタートでも、たった1回でも経験してみよう、という場合でも、遠慮なく相談してくださいね
私は、どんぐりワールドを見たことがある子を増やしたいのです!それはもしかしたら、子どもにとって『サンタクロースの部屋』になるのかもしれないから