「集中して」
「静かにして」
なんて言ってないのにこの姿
低学年、自由奔放な少年たちのこの姿
さっきまでカードゲームで勝った負けたの大騒ぎの大暴れだったのにこの姿
なんだか笑っちゃう
彼らが集中すればするほど、なんだか笑っちゃう(我慢してます)
だって可愛くて
嬉しくて
これが、自分の頭を動かして、手を動かして、考えて解いている姿です

2014年前後、現在大学生の長女が小学生の時、
男子は電子ゲームで遊んでいたけど女子はあまり電子機器で遊ぶことはなく、
男子の親御さんが先生にゲームのことを相談していたりしました
中学校の入学説明会では生徒会役員の先輩たちが壇上で「高崎市のスマホルールに基づき、この中学校でも生徒のスマホ所持は認めません。すでに契約している方は解約してくださいね」と話していました

2018年前後、現在高校生の次女が小学生の時、
男子は動画サイトを深夜まで見たり、オンラインゲームで見知らぬ人とやりあったりしていて、女子はスマホやタブレットでSNSに没頭する、と悩みを打ち明けてくる親御さんが増えました
担任の先生はその状況を危惧して、授業参観の日にクラスアンケートの結果を発表して話し合わせました
親も聞いている中でです
脳への影響、視力への影響、若い担任の先生はご自分で調べてきてくださったことを子どもたちにまた、きっと教室の後ろに立っている私たち親に、一生懸命訴えていました

2020年から全国で本格始動した文部科学省のGIGAスクール構想で、子どもたちには学校から電子機器端末を貸与されることになりました
2019年末から流行したウィルス感染症の恐れがある、ということで休校や、学校活動に制限が掛けられ始めた頃とタイミングが合っています

そもそも一斉授業は古い
それぞれが自分の習熟度や学びたいレベルに合わせて学べる個別端末はよい
板書や教科書の内容を越えた無限の学びを探求できる
と、
いろいろな「良い点」がクローズアップされ、先生たちも研修を受け、感染対策と同時に学校生活の主たる活動となったICT教育です

じゃあ、
数年前まで「使わない」「使用を控えましょう」「視力が…」「運動能力が…」と、問題視されていた事実は、どこへ

GIGA構想を紹介した動画では「自分で考えなくてもこれを使えばわかるので嬉しい」とにこやかにタブレット端末を紹介する女児がいました

「国民は考えずに寝ていてくれたらそれでいい」そうすれば選挙で勝てるから、と言った与党議員もいました

まぁいいやが増えたのは大人になったからじゃなく、
きっと空気の中に変なものを
俺らが考えすぎんのをよしとしない誰かさん達が
混ぜて垂れ流しているんだろう(2012 back number『青い春』)

深く、ゆっくり、じっくりと自分の頭で考える
ここを避けて成長してしまった子どもたちはどんな大人になるんだろう
ますます「まぁいいや」って考えず、
大切なことも面倒になって寝て過ごす、見ないふりをする

心も動かない
面倒だし
なんだ、「心」って
けっ

触れば書ける端末で、
鉛筆の芯が折れる感覚も、インクの出方も、不快
まっすぐに線を引けるようになるまで何年もかかったあの感覚も、
味わうことなくさっと端末内のアプリで表作成も簡単に

先週、
中学生から「英単語をどうやったら覚えられるか?」という質問が相次いだので、ある方法を伝えました
他にもたくさんの方法を知っているけれど、そのうちの1つを伝授しましょう、と
(実際には、いろいろ試し、自分の手や頭を動かし、実践し、失敗し、その中で、自分だけの方法を見つけていくもの)
私は事前に、A4サイズの方眼ノートに表を書き、その中に英単語と日本語を整然と並べていきました
まずはテスト範囲の英単語の一覧を作ります
ぱっと見て、「今回はこれを覚えるんだ」とわかるような「一覧」にするのがポイントです
それから、その単語を「テスト形式」に書き換えます
日本語の意味を番号をつけながら羅列し、その横に同じ番号を振った英単語を羅列します
どちらかをノート等で隠せば簡単に英語→日本語、日本語→英語のテストができるような形式で書いていきます
ここまでで、同じ英単語とその日本語訳を2回通して書いています

この作業内でおおかた覚えてしまう子もいます
テストの方法は、たとえば100個の英単語を覚えたいなら、1日10個ずつ覚えるのではなく、1~100まで一気にテストしてすぐ採点して、ミスした問題に×をつけて、2回目は×の問題だけをテストして採点、3回目も…×がなくなるまでテストして、その日は終了
そのまた2日後に同じように1~100までをテストして…を、繰り返すだけです

そんな説明をするために私は手書きでそれらの資料を作っていました
そんなの、パソコンで作れば簡単ですし、作って配布してあげればいいだけのこと
でも、
30年近くこの仕事をしてきて、そんなことはとっくに試しています
できるだけ勉強に取りかかりやすく、使いやすい資料を揃えてあげることに徹した時期もありました
英単語に関していえば、教科書に出てくる英単語を全て打ち込んだ資料を作って冊子にして配布していた時期もあります
すでに一覧になっているのと、テスト形式に使えるようになっているのとで、上記のような作業を省いて、いきなりテストから生徒たちは始めることができるのです
市販ではなかなか見つからなかったのですが、数年後に塾専用教材で自分が作っているのと似た形式の英単語集を見つけたので、それを購入して配布していた時期もありました
でも、
やめました
結局、本気で英単語を覚えようとする子がしていることは、「自分の手と頭を動かすこと」で、いくらいい教材、使いやすい教材を手渡したところで、「自分の手と頭を動かさない」子は持っているだけで何もしないのです
「やろうと思ってもできない」と愚痴っているだけで終わるのです
(幼少期からの成長の影響で、中学生のその状態は生まれます
そのままいればそのままで終わるし、その状況を打破する方法もあるし、実際に打破した生徒をたくさん知っていますが、その話は要望があればまた別の機会に)

学習系動画や、最強の勉強法を紹介する本などを見ると、いかに効率よく英単語を覚えるか、そのための資料はこういうのがいいよ、などといろいろ書いてありますが、自分で一覧を作って英単語テストまで作ってするんだよ、なんて面倒な方法を紹介しているのをほとんど見たことはありません

たぶん、私の説明を聞いている時点で「もっと簡単な方法はないのかな」「もっと楽にできる方法はないのかな」と不満に…不安に思った子もいると思うのです
残念ながら、自分の手も頭も動かしてみないうちからそんなことを思っていたら、潜在能力を伸ばすことは不可能です
「もっと簡単な方法はないのかな」という問題提起から、自分で試行錯誤するのならもちろん効果はあると思います
でも、誰かに提供される資料や、お金を払えば手に入るモノや情報だけで楽をしようと思ってる場合は、ほとんどうまくいかないのです

ちょっと見るだけで覚えてしまうような人や、最高峰の学校を目指していたり、合格していたりする人のアドバイスは小中学生の学習法にはほとんど参考にならないのです

そんな面倒くさいこと…
子どもにとって負担だよ
大変過ぎるよ
子どもが食いつくような面白い教材じゃないと
ご褒美をあげないと
?????

時間がない大人の、資格試験の勉強とは違うのです

小中学生時代は、「うまくいかないなあ」という経験から進化が始まります
「どうしたらいいんだろう」からアイディアが生まれます
表をひとつ作るにしても、長い定規があったらなあ、定規がないなら下敷きを使おうかなあ
間違えないように英単語を書き写すのも、目の移動距離が長くない方がいいぞ、と気づいた子は、手本の英単語を、書こうとしている紙のすぐ横に移動させます
いつまでも遠くに手本を置いていて、首をぐるぐる動かして書いていて、何度もスペルミスをしている子もいます

ちょっとした思いつきや工夫、実践、そして失敗が、その子の成長につながっていきます

指示通り、言われた通りのことができても、その子の中の進化にはつながりません

ノートに書いてみる、板書を写す、というだけでも、どれだけの実践と失敗、工夫が重ねられるか…
それが、
ある学校では朝から夕方までタブレット学習だといいます
宿題までタブレットで出され、子どもたちは1日中電子機器の画面上で勉強しているのです
間違えたら一瞬で消去できます
消しゴムのカスも出ません
先生も子どもも、移動せずに採点をしてもらえます
なんなら効果音やスタンプが豊富で、子どもの「やる気」を引き出す工夫がなされています

画面に浮かび上がっている文字と、紙の教科書や黒板に書いてある文字とでは同じ文字だから違いはないでしょう、と思っている人もいるかもしれませんが、それらは同じではありません

音楽家の知人が、いくら電子機器の性能が上がって生の音楽に近い音を再現できるとは言っても、絶対音感と特殊な能力を持ったその方の耳には、電子機器を通して聞こえる音には独特のノイズがあり、それがとても苦しい、と言っていました
私のような凡人にはわかりません
でも、動物たちが私たちに聞こえない音波を聴き、見えない光線を見ているように、人間の感覚器官にも、本当はその違いを感じとる力があるのだと思います
成長期の子どもの成長過程にはどのように影響しているか、想像がつきます
だから、
画面と紙とでは違っているのです

9割以上の子どもたちが電子ゲームをしている現在
これまでそんなにも子どもたちを夢中にさせたモノが存在したでしょうか
ゲームが面白いからか
そうではありません
簡単に楽しめるからです
いいえ、ゲームは頭を使いますよ、と言う方もいました
それは頭を使える人がゲームをするからです
あなたの頭がいいからですよ、と私は言いました
そもそも頭の使い方がわからない人がゲームをしても、楽しめないはずです
それから、大人の方でゲーム好きな方に聞くと、リラックスのため、暇つぶしのため、と言うことがあります
脳を休ませるため、何も考えたくないからゲームをして過ごすのだとしたら、
それは、脳を成長させている時期においてはどうなのでしょう
帰宅後に、特に見たくもないのにボーッとテレビ画面を見ているサラリーマンの夫の姿を見ていると、疲れているんだなあ…とわかります(苦笑)1日働いた疲れを、何も考えずぼーっと流れてくる映像を流し見して休ませているんだなあ、と
これが子どもだったら怖いです…

そう、子どもたちがゲームを好きになるのは「画面」の楽しさも大きくて、
だから、
学校で電子機器の画面に触れられる今、きっと、多くの子が「勉強って楽しい」と「勘違い」していることでしょう

そしてますます電子機器中毒、デジタル画面中毒のような症状の子が増えている昨今です

きっと、もっといい使い方があったはず
デジタル機器や、インターネットの恩恵を受けてきた私は思います
でも、子ども時代はそんなの存在しなかったけどね

いつも言いますが「そのものが悪」なのではなく、使い方が問題なのです

数年前まで、学校は電子機器の介入を危惧していました
家であまり使わせないで、とはっきり言っていました
教員をしている友人達は「デジタル脳やばい」と愚痴っていました
体験授業に来る子どもたちでデジタル中毒の子は、視点が合わず、話が聞けず、1mmの虫にも悲鳴をあげるという共通点がありました
親御さんはそんな様子を目の当たりにしても、我が子が中毒だなんて気づいていません

ここ数年のこの大きな変化
学校の先生達も「デジタル機器で授業がやりやすくなったなあ」と思っている方と、そうは思えない方と混在しているんだと思います

食事の仕方や、トイレの使い方など、本来家庭で身につけるはずのことを身につけないまま、まるで赤ん坊のような小学校1年生が大量に入学してくる春、教員の友人達は悩み苦しんでいました
家庭に訴えることなどほぼできないけど、慎重に言葉を選んで伝えれば「学校で教えてください」
さらに「うちの子、ゲームばかりしているので先生から注意してください」

明日の予定を板書して連絡帳に書き写させるだけでも一苦労だと
それが今や、タブレットで撮影して帰る、という学校も増えています
音読もタブレットで録音して送信するのだそうです

こんなの止めたい、と思っている先生方もいるでしょう
家庭のデジタル化を一生懸命阻止しようとしている親御さんも多いでしょう
(どんぐり家庭などみんなそうでしょう)
でも、
便利になってよかった、指導や管理が容易になった、と喜んでいる先生や親御さんもいることでしょう

でも、数年後、必ず弊害は目に見えてきます
今でもすでに、出始めていますが、もっとわかりやすく出てくるでしょう
でも、たとえば今小学生の子は中学生になっていて、責任の所在はわからなくなっているでしょう
責任を問うたところで、取り返しはつきません

だから家庭で守るしかない
草の根運動しかない
身近な生活の中で、デトックスしていくしかないんです

昨日、我が家に新しい冷蔵庫が届きました
できるだけシンプルで、それまで21年間使っていた冷蔵庫とサイズも機能も変わらぬ仕様のものを見つけて購入しましたが、扉がそっと触れるだけで自動で開くのです
家電が届くと、取扱説明書を本のように最初から最後まで読むのが楽しみな私です
さっき、ちらっと見たら、「自動開ドアの解除」という項目があったので、早速これから解除するつもりです
身体的な事情で、そっと触れただけでドアが開くシステムが重要な方もいると思います
でも、我が家には不要です
これから熟読しますが、なぜかWi-fiのマークもついている冷蔵庫で、いったい何をしてくれるのか?好奇心もありますが、不要な機能は解除して使うつもりです

子どもは家庭で守り、育てることができます
家庭が安全地帯で、家庭教育が整っていて、しっかりしていれば、子どもは外で逞しく冒険するのです

油断すると大人まで流されてしまいそうな激流の現在、
取り返しのつかないことになってからいろいろなことを諦めるのだったら、
今から予防できること少しだけ意識して、子どもと暮らしてみませんか